スクープ!中国拘束116日はじめて明かされた全真相|吉村剛史

スクープ!中国拘束116日はじめて明かされた全真相|吉村剛史

「彼らの狙いは王毅だった」――中国で拘束された岡山県華僑華人総会のトップがはじめて明かした拘束116日間の驚くべき全貌。屈辱の“拷問体験記”!


拘束期間を通じ、男性と女性の担当医師も付いて「毎朝の血圧測定などで健康管理も行われたが、カメラと係官に24時間行動を監視され、就寝時も点灯するから明るくて眠れず、いつも毛布を頭からかぶって寝た」。  

三度の食事内容は中国の一般家庭料理風。日本生まれ、日本育ちの当時70歳の劉氏の口には「脂っこくて合わなかった」といい、「帰宅時には体重が大幅に減少していた」とも。ただし、天津の収容施設は蘇州に比べて部屋も広く、石桍やティッシュなど日用品のグレードも高く「高級幹部用に思えた」。食事も天津包子(肉まん)など劉氏にも食べなれたものが出るようになり、「随分マシだった」という。  

だが、トイレに行くにも挙手して係官に申告が必要な不自由さは変わらず、「当初の約40日間は、慣れない環境のなか、風邪などで体調を崩すことを懸念し、入浴を申請する気にもなれなかった」と振り返る。

狙いは王毅

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胸中、理不尽な思いでいっぱいだった劉氏は、「同胞を支援してきた私がなぜスパイなのか」と猛抗議したが、取り調べ官は、極刑や長期拘束の可能性をにおわせつつ岡山県華僑華人総会の元職員が日本の公安当局に公開行事日程表などを提出していたことに対しての監督責任を追及。一方、劉氏の中国外交官との交際を質し、なかでも駐日大使時代の王毅氏との関係について「特に念入りに聞かれた」。 “拘束体験記”は次のように続く。

〈2005年頃(※岡山県華僑華人総会で)採用した(※女性)元事務局長(天津出身)と(※日本の局との間で)機密文書を渡したとか…。5~7年前(※2010年前後のこと)に退職した彼女と(※日本の公安・外事当局の)担当者との繋がりと、彼らとのやり取りを私が見たこと・聞いた事があるかと、2人の尋問者がしつこく聞いてくる。「知っていれば言うが、知らないことは言えない!」  

あまりにもしつこい取り調べにこちらも腹を立てケンカに!しかし、こいつらのペースに乗ってはダメ!!と強く自分に言い聞かせ、気分を落ち着かせる。決してペースに乗らないぞ、と心の中で繰り返す。

◇ ◇ ◇
(※取り調べの)ボス曰く「あなたは、海外華僑では初めての拘束者。岡山・日本では有名人。大使・総領事とも良い関係を築いている…。困難な同胞を助けている劉さん。私たちがここまでするのは理由がある」との事。  

今回私を拘束した本当の目的は、私が長い間華僑(※の地位向上)運動を行い、(※中国の駐日)外交官との絆を持っている事で、外交官に個人的なサポートをしていると断定した上で、公務員の(※中の汚職体質の)大きなトラ、小さいハエをたたく運動の中で(※実情を)聞き出す事である(※という)。(※しかし)彼等のしつこい取り調べが、多くの冤罪者を作り出すのではと懸念される。私は、彼等より長く運動体験をしており、強い精神で彼等とやりあった。精神的に弱い者は、彼等の(※狙った人物の不利になるような証言が巧みに引き出され)筋書き通りになっていく事が懸念される。 (※中国の)国内の問題に海外華僑を巻き込むのはやめろ!と声を「大」にして言いたい。又、私が知る外交官の名前が出てきたが、私の知る限りそれぞれのポジションで立派に仕事をされているので、その状況を話すのみ!〉  

拘束の背後には、「トラもハエも叩く」として、習近平指導部が強力に推し進めた「反腐敗」運動とともに中国国内の権力闘争の影が垣間見える。そして、劉氏への尋問はいよいよ核心部分に入る。 〈(※中略)70歳(※当時)の私に「2005年、王毅大使(※当時)を岡山に迎えて講演したのはなぜ?講演内容を話しなさい!」…(※講演が)2005年であった事自体忘れており、講演内容の細かい所まで覚えていない…「想一想(※シャンイーシャン)(考えなさい)。安全部は何時間でも待つが、早く日本に帰りたいのなら想一想!想一想!」とのこと。無理な“想一想”である。 「活動経験上偉い人の話は大体理解しているのでまとめて話す」と…。「劉さんの考えでしょう!それはダメです。劉さんの意見ではなく本当の事を言って!」というやり取りが続く。(※中略)〉

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