台湾の蔡英文総統は10月31日、国防部長(国防相)や外交部長(外相)ら政権の主要幹部が出席する「国家安全会議」を開き、台湾海峡で軍事的緊張が高まっていることについて「様々な事態を想定して、万全な準備を行うよう」と指示した。
中国軍は今年夏以降、台湾海峡周辺で軍事演習を何度も実施しただけではなく、軍用機を台湾の防空識別圏(ADIZ)に頻繁に侵入させ、挑発行動を繰り返している。台湾国防部の集計によると、中国軍機は今年になってから10月7日まで、延べ1710機が台湾のADIZに入り、そのうち49機が台湾と中国の中間線である「海峡中線」を越えた。いずれも過去30年間で最多である。台湾軍は戦闘機を緊急発進させるなどして対応している。今の中台関係を「準戦争状態」と表現する台湾の元政府高官もいる。
武力衝突へ発展も
蔡総統らは、11月3日の米大統領選挙から来年1月20日の大統領就任までの移行期間を狙って、中国が台湾に軍事的圧力を強め、偶発的な事件が武力衝突に発展することを特に警戒している。米軍も同じことを考えているようで、台湾海峡周辺に艦船を派遣し警戒態勢を強化したほか、10月8日にMC130J特殊作戦機を台湾海峡上空へ飛ばし、中国軍の動きをけん制した。
中国が台湾に強硬姿勢を示すようになった背景には、最近の米台接近への不満がある。米国のトランプ政権は8月にアザー厚生長官を台湾に派遣し、9月にクラック国務次官も訪台させ、外交関係のない台湾との実質的な政府間交流を開始した。同時に、台湾に対する武器売却計画を次々と発表した。
台湾問題に詳しい中国人記者によれば、中国の習近平政権は今「米国は台湾独立を暗に支持し始めたのではないか」と疑心暗鬼になり、台湾を威嚇することによって独立運動の機運を抑えようとしているが、この動きは逆に台湾人の「愛国心」を刺激してしまったようだ。