○○すぎるが多すぎる|電脳三面記事

○○すぎるが多すぎる|電脳三面記事

ビル・ゲイツの妹(という設定)のライターが、ネットで話題になった事を斬りまくる、人気連載「電脳三面記事」。「○○すぎる」というのがやたら流行った時期がありますが、いまはその延長として本質から離れたプロフィールのエンタメ性が話題になっていますね。


「美人すぎる」に込められた二つの意味

美人すぎるってありましたよね

美人すぎる自衛官、美人すぎる弁護士、美人すぎる大学講師、美人すぎる競輪選手、美人すぎる外科医師、美人すぎる国家元首……。この表現を定着させたとされる元祖・美人すぎる市議は現在4期目だそうですが、この「美人すぎる」は、二つのことを言おうとしていましたね。

ひとつは「女だてらに」。

え、なんで女が、こんなに主体的な、本来、男のものである仕事してるのという驚きが、この表現には込められている。美人すぎる看護師とか美人すぎる保育師ではないんですよ。美人すぎる大学生と言われるより、美人すぎる東大生と言われたほうが「どれどれ」という気持ちになる、そこを狙っているのです。

さらに「美人なのに」。

美人なのにどうしてその容姿を活かさないのかというお節介以外の何物でもないラベリングする側の脳内が反映されています。だから、美人すぎるCA、美人すぎる秘書、美人すぎる受付嬢ではないんです。

そのあたりをうまくぼんやり伝えられたのでこの表現は重宝され、そうしたラベルを得て目立つことを考える人も増え、その結果としてすぐに陳腐化しました。いいことです

しかし、ここから何かを学んだ人はいたわけで、それがお茶目な国会議員を生みます。

Wikipedia によると、テレビ東京が元NHK記者を登用した開票速報を放送し始めたのは2010年7月、EX菅内閣時の第22回参院選からでした。事前に見所を挙げるなら、NHK一強のこの分野に“俺たちのテレ東”がどう挑むのかの一点でしたが、2014年にはこの番組が紹介する本質から遠く離れたプロフィールのエンタメ性が話題になり、それなりの存在感を確立しました

言ってみれば、主音声に対する副音声としての、SNSへの撒き餌としての地位を確立したのです。

2014年のテレ東選挙特番でこの方はこう書かれていた。いたって普通。

求められているのはキャラより仕事ぶり

そしてその副音声の人気に気付いた形容される側が、自らすすんで本質から遠く離れたプロフィールを開陳し、○○すぎる国会議員であることをアピールするようになりました。

マンガ好きすぎる国会議員、ミリオタすぎる国会議員、スイーツラブすぎる国会議員、バンドマンすぎる国会議員(現群馬県知事)……あと何がありましたっけ、ホント、有事にはどうでもいい話ですね

でも、副音声は真剣勝負じゃないところで当事者じゃない人がしゃべるから面白いのではないでしょうか。SNSが盛り上がるのは、自分たちが主体的にその楽しみ方をみつけたと思えるからではないでしょうか。

ところが、近頃はギャップさえあれば受けるとふんだのか、巷にもセルフプロデュースの可愛いおじさん(亜種多数)が累加していて、目のやり場に困ります

イクメンはその最たるモノ。イクメンアピールが過剰な男は実は不倫しているという真偽不明の、しかしながらもっともらしい仮説がSNSで流れたことによる爆発的増殖の回避ができずにいたら、大変でした。

逆サイドに立てば乱造される○○女子も目に付くのですが、こちらはかなり古典的。小賢しいプロデューサーやほくほく消費する側の視線が感じられて、ああ、そこにはまだいにしえのエコシステムが生き残っているんだね、と少しは温かい気持ちになれます。

とはいえ、もうおなかいっぱい。捨て猫を拾い可愛がっても不良は不良、ときめきません。

こんなご時世、おじさん、言い換えれば働いている人に求められるのは可愛らしさより、美人すぎることより、しっかりした仕事ぶり

近々また総選挙がありそうです。テレ東は、まだエンタメ路線でいくのでしょうか。そろそろ引き際のような気もしますが。

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