なべやかん遺産|「雛形」

なべやかん遺産|「雛形」

芸人にして、日本屈指のコレクターでもある、なべやかん。 そのマニアックなコレクションを紹介する月刊『Hanada』の好評連載「なべやかん遺産」がますますパワーアップして「Hanadaプラス」にお引越し! 今回は「雛形」!


難しいコレクションのランク付け

これまでのコレクション人生で様々な物を手に入れて来た。

ポスター、怪獣漫画、怪獣図鑑、台本、原画などの紙物コレクション、ソフビ、手踊り、ブリキ、超合金などの玩具コレクション、ファンメイドのリアルに作られたキャラクターや武器、映画やテレビで使われたプロップコレクション、とにかく色んな物が沢山ありすぎて部屋が物で埋もれている。

大量のコレクションの中から「好きな物」の順位を付けるのは困難である。番組や雑誌の取材の度にそんな質問をされるのだが、本当に選ぶのが大変。
「好きな物」と「大切な物」「思い入れのある物」「思い出の物」「価値のある物」は違うからね。各々のカテゴリーで順位を付けるのならまだしも、大雑把に「好きな物」と言われるのはとても困る。(事務所マネージャーもこの質問をしてくるから困る)

さらに言えば「では、どのジャンルが好きですか?」といった質問も答えを出すのがとても厳しい。その理由は、スペシウム光線的な最終必殺技に匹敵する物が手に入るかどうかというのがあるからだ。

例えば、台本コレクションでいえば、平成の特撮番組の台本を適当な数だけ持っているのと、昭和の怪獣映画台本を何冊も持っているかではカテゴリー別の好き度や大切度数が違ってしまう。あと、ここ最近手に入れたお気に入りの物があるかどうかでも違う。

必ず年にいくつかのマイブームがあり、どうしてもその時々で自分のコレクション内の注目度が変わって来るのだ。

仏像並みに美しいウルトラマンの雛形

ここまで色々と能書きを書いてしまったが、常に上位にいる「好きな物」&「大切な物」カテゴリーに入っているコレクションを今回は紹介しよう。

コレクションの大部分を占める映画&テレビ作品の撮影用プロップ類。これらのコレクションも実は細分化出来る。日本物、海外物、テレビ作品物、映画作品物、アーティスト別、等々。

そのように細分化していくと「雛型」というカテゴリーも作ることができ、実はこの雛型が個人的には物凄く好きなのだ。

雛型とはどういったものかというと、撮影で実際に使うキャラクターなどの特殊造形物を作る時に小さいサイズで検討用モデルを作る。その立体物を監督やスタッフで見ながらあーだこーだ言って実際に作るものを決めていく。その為の大切なモデルが雛型なのだ。

雛型は立体の設計図のようなものなので、とても大切な物。雛型の中には、きっちり作っているものもあれば、ラフに作って大まかな雰囲気だけを掴んでいるものもある。

ウルトラマン雛型は我が家のご本尊的存在。

NGになったのが残念。完成度の高い造形と塗装。

では、雛型コレクションを解説しよう。まずはウルトラマン雛型。当時、人が着るためのウルトラマンのマスクやスーツを作る前に佐々木明さんが雛型を作成した。

ウルトラマンの雛型はラフモデルだ。当時作られた雛型は現存していないので、佐々木さんに作り直してもらったのがこの雛型。

当時のオリジナルとは若干の違いはあるが、佐々木さんのテイストが良く出ているのでとても素晴らしい出来だ。我が家では神社仏閣にある本尊のような扱いをしている。仏像に匹敵する美しさがウルトラマンにはある。実に美しい。

アメリカ映画『スポーン』(1997)用に作られたキャラクターの雛型がある。残念なことに雛型は作られたが作品に登場することはなかった。作品作りにはそういったことも多々ある。

幻のキャラクターというのも中々レアであり、映画の深みを知ることにもなるのだ。造形も塗装もとても素晴らしいので劇中に登場出来なかったのが残念でならない。

映画とこの写真を見比べて欲しい。細部がよくわかる。

特殊メイクアーティストで監督の原口智生さんが設立した中洲プロで作られた雛型が二つある。一つは『陰陽師』(2001)で真田広之さん演じる道尊が飼っていた鳥。
脚が三本あるので八咫烏(やたがらす)の式神かな?

これも映画用に作られた雛型でコンセプトデザインは天野喜孝さん。撮影用は雛型の倍くらいの大きさ。劇中でこれといった大活躍をするシーンはないが、道尊とのツーショットはとても印象に残るシーンだった。

残念なのは画像が暗いシーンなので細部が確認しにくいが、こういった時に雛型が役に立つ。雛型を見ればわからなかった箇所が確認できるのだ。

昭和と平成。見事に違うライオン丸とタイガージョー。

キャラクターが誕生するまでがわかる大事な資料

『快傑ライオン丸』(1972)をリメイクした『ライオン丸G』(2006)に登場したライオン丸とタイガージョーの雛型。

物語の時代設定も現代なので、キャラクターデザインもスタイリッシュになった。昭和版はネコ科の動物がそのまま人間化した感じが強いが、平成版は仮面ライダーに登場する怪人的な要素が入った感じ。

雛型を見ただけで、物凄くかっこいいスーツが出来上がる雰囲気が漂っている。実際の人が着るマスクやスーツは革を使っていて昭和のライオン丸やタイガージョーとはかなり違ったデザインと仕上がり。

雛型はデザイン画を立体化したものだ。キャラクターが誕生するまでの過程がわかる大事な資料でもある。粘土原型を作り、それを型取りしFRPやキャストで抜かれて今でも残っている物もあれば、粘土原型で終了してしまう雛型もある。

そして、そのまま彫刻として残される物もあれば潰されて粘土のかたまりに戻ってしまう物もある。雛型はあくまでもメインの物が出来るまでの過程なので、悲しい終わり方をしてしまうことが多いのだ。

だからこそ、雛型は貴重でありコレクション価値があり、残ってくれてありがとう、そんな気持ちで毎回雛型に接している。

「雛型」というカテゴリー。今後も様々な雛型に出会えることを望んでいる。

雛型コレクションと私。

なべやかん

https://hanada-plus.jp/articles/304

昭和45年8月22日生まれ。たけし軍団初の2世タレントとして、91年デビュー。趣味の特撮キャラ収集では、30年以上前から専門誌やイベントで資料提供している。主催のお笑いライブは、個人主催では最長記録である。

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