23年前に、「ユーラシア大陸で大国へのし上がるのは中国だ」と正確な予想をしたズビグニュー・ブレジンスキー教授は、日本が大国となる資格を持ちながら、それが不可能なのは、米国に安全を保障してもらっている日米安保条約があるからだとのジレンマを指摘し、結局、日本を支配しているのは軽武装・経済大国重視の「吉田ドクトリン」だと見破っている。その内容は、経済発展を最重要課題とし、防衛は最小限にとどめて国際的な武力紛争に関与せず、安全を米国に依存し、外交ではイデオロギーを排除して国際協調に努める、の4点だという。
ブレジンスキー氏の分析は見事だ。以後、国際情勢の局面は大きく回った。しかし、それでも憲法に一指も触れず、対外的に当たり障りのない発言を繰り返す。喜劇は悲劇にならないだろうか。( 2020.06.01 国家基本問題研究所「今週の直言」より転載)
著者略歴
国家基本問題研究所副理事長。1933年千葉県生まれ。早稲田大学法学部卒業後、時事通信社に入社。ハンブルグ特派員、那覇支局長、ワシントン支局長、外信部長などを務める。1992年から杏林大学で教鞭を執る。法学博士。杏林大学名誉教授。専門は国際政治。国家基本問題研究所副理事長。美しい日本の憲法をつくる国民の会共同代表。著書に『戦略家ニクソン』『激流世界を生きて』『憲法改正、最後のチャンスを逃すな!』など多数。