たとえば、3月20日の春分の日から始まる3連休、大阪をはじめとする関西圏は外出自粛の要請が出たが、東京の小池知事は動かなかった。東京の花見の名所は都民でごった返し、夜の歓楽街は歓送迎会の学生や会社員で溢れた。
こうした人々の行動の帰結は、2週間くらいすると、感染者数の数字に反映されてくるが、3連休を原因とする感染者数は、首都圏と関西圏で有意な差は出なかったのだ。そして、世界各地で発表される各種のデータを理路整然と説明できるのは、いまのところ広い意味での集団免疫論だけなのである。
いま、世界中の国が武漢ウイルス禍という長いトンネルの出口を探している。出口を見つけ出すカギは、抗体保持者だ。抗体を持っている人は、ウイルスに感染しないし、人にうつすこともない。武漢ウイルスに負けない集団が大半を占める国は、堂々と国境封鎖を解除し、学校を再開し、経済活動を全面的に再開できる。
そのためには、集団免疫説を排除せず、国民の抗体保持率を調査する必要がある。日本政府は世界に先駆けて抗体検査の指標を確定し、大規模な検査を実施できる体制を作るべきだ。
コロナウイルスの抗体は、半年程度で消えてしまうものと見られている。早く抗体を得た日本人は、早く抗体が消える。抗体が有効なうちに経済活動を全面的に再開して傷ついた社会を立て直す一方、ワクチンと治療法の研究に総力を挙げなければならない。
さもなくば、日本と世界は、いまよりもはるかに陰惨な冬を迎えることになる。
(初出:月刊『Hanada』2020年6月号)
著者略歴
1966年、東京生まれ。フリージャーナリスト・アメリカシンクタンク客員研究員。90年、慶應義塾大学経済学部卒、TBS入社。以来、25年間、報道局に所属する。報道カメラマン、臨時プノンペン支局、ロンドン支局、社会部を経て2000年から政治部。13年からワシントン支局長を務める。16年5月、TBSを退社。著書に『総理』(幻冬舎)など。