もはや対岸の火事ではない
2月10日にはWHOの調査チームが中国入りしたと報じられていますが、WHOのこれまでの及び腰の対応を見てもわかるとおり、エチオピア人のテドロス事務局長は完全に中国に頭を押さえつけられています。中国に阿っていることが明らかな組織に、実態解明など期待できません。
ほんの少し前まで「各国の中国からの渡航制限は過剰だ」などと述べていたWHOは、2月12日になって「新型ウイルスは世界的に非常に重大な脅威」などと言い出していますが、遅すぎます。
すでに、日本にとって新型肺炎は「対岸の火事」ではありません。それどころか、中国では「日本に逃げるならいまだ」という声さえ上がり始めています。
このままでは、日本は「ウイルス輸出国」に転落しかねません。日本のためにも、中国共産党の発表を鵜みにするのではなく、国際機関などとともに中国に強い圧力をかけてもらいたい。
なぜ、私がここまで強く中国共産党を批判するのか。それは先にも述べたように、私自身が文化大革命を体験しているからです。
私は5歳半の時に何の前触れもなく、「お前たちは”下放”だ」と共産党から告げられ、どこに行くかもわからないまま一家でバスに乗せられました。そして荒廃しきった田舎の、何年も人が住んでいない廃屋に投げ出されたのです。
当時も春節の直前でした。母が春節に備えて麻袋に蓄えていたお菓子を食べて何とか凌ぎましたが、凍死するか餓死するかの瀬戸際で、幸い体が丈夫にできていたから運良く死ななかっただけ、という状況でした。
周りもそうした家庭ばかりで、幸せに暮らしていた一家が、ある日突然、その生活を奪われて地獄に放り出されたのです。
中国共産党は昔も今も、人民の生活、人生はおろか人命さえも軽視している。私自身が体験した文化大革命でも、今回のコロナウイルス対応でも、全く同じことが繰り返されているのです。
中国政府を信用してはいけない。彼らは想像をはるかに超える残酷なことを平気で行う。この大前提を、決して忘れてはいけません。
1964年、中国ハルビン生れ。1987年来日。1995年、お茶の水女子大学文教育学部卒業(地理学専攻)。2007年『ワンちゃん』で文學界新人賞受賞。2008年『時が滲む朝』で日本語を母語としない作家として初めて芥川賞を受賞する。この他の作品に『金魚生活』『おいしい中国―「酸甜苦辣」の大陸―』『獅子頭(シーズトォ)』『孔子さまへの進言―中国歴史人物月旦―』などがある。2009年より関東学院大学客員教授も務める。