アナウンサー:フランス全土の大規模デモ。発端は9月から始まった教員や高校生による抗議活動でした。パリ郊外の高校を撮影した映像では、校舎の中をネズミが這いまわり、トイレの床には水がたまっています。
教育環境の改善を求める運動に、物価高に苦しむ市民が共鳴し、大規模デモへと発展したのです。背景にあるのが政府の苦しい懐事情。財政赤字がGDP比5%を超え、EU主要4か国の中で最も高い水準です。EUから財政の再建が求められる中、その足かせとなっているのが、極右や急進左派の野党勢力です。デモに乗じて政権批判を強めています。
議会が三つ巴状態のなか、野党は負担増につながる政策に反対することで国民の支持を集め、政府が身動きをとれなくなっているのです。財政再建のめどが立たない中、国債が売られ、21日には長期金利が5%台まで上昇、24年ぶりの水準となりました。
膳場貴子氏:デモの背景をみると、ちょっと他人事とは思えないんですけれど。日本とも共通する点が多く見受けられます。
寺島実郎氏:欧州の政治に何が起こっているかと言うと、政治の下部構造が、移民排斥的なものでの右傾化と生活苦を背景にした左傾化というのが同時進行してしかも過激化している。日本に引き付けて考えておく必要がある。(中略)
他人事じゃない。要するに財政規律を含めて経済を本当にしっかりさせていかなければいけない議論を始めなければいけない。
膳場貴子氏:本当ですね。数字だけ聞いていると、日本で暴動が起きていてもおかしくない状況にも聞こえてきます。
膳場氏のおっしゃる通り、フランスが財政赤字と物価高と長期金利の上昇に苦しめられていること、そして極左や極右が政権打倒のためにポピュリズムを発動して財政再建を阻害していることも日本とよく類似しています。
しかしながら、そのことを根拠に「日本で暴動が起きていてもおかしくない」とするのは、極めて倫理観に欠けた暴力の正当化であり、市民を暴力に扇動しかねないものです。
民主主義社会である日本やフランスでは、選挙・リコール・訴訟といった【適正な法手続き due process of law】が保証されており、政治の不満を理由にして暴力に訴える超法規的行為は、法治によって守られている社会秩序を破壊する暴力革命です。
暴力革命は制度の改革を論理的に行うものではなく、その社会的損失については、最終的に市民が補償させられることになります。
非難されるべきは、このような暴動を起こした一部のフランス市民です。テレビ番組の司会者がこのような暴力革命を正当化し、日本人を扇動するような発言をすることは明らかに放送倫理に反しています。
安田菜津紀氏:一部での破壊行為の被害を軽視してはならないという前提に立ちますが、そもそもデモが起きているのは、各国で背景事情は少し異なるにしても、物価高だったり、家賃の高騰だったり、あるいは教育環境の問題だったり、政治の不作為があるからですよね。
にも拘わらず、トランプ大統領が言及したように「移民が悪い」「移民のせいだ」というふうにマイノリティを排除すれば解決するかのようなデマだったり、不確かな情報が拡散されていく。で、極右政治家もそれを扇動していく、これ非常に深刻だと思うんですよね。
現に数日前にパリの郊外では、イスラム教徒などを標的にしたとみられる銃撃事件も実は起きてしまっているんですよね。で、なおかつこうした排外的な言説というのは、ヨーロッパからネット空間を通してあっという間に日本に拡散されて増殖されていくという、そこに危機感を持っていくべきだと私は思います。
これはまさに本末転倒のコメントです。
今回のデモに紛れて放火・略奪・警察への襲撃などによる暴動を繰り返しているのは極左過激派の「ブラック・ブロック(Black Bloc)」であり、「アンティファ(ANTIFA)」の関与も指摘されています。極左政党の「不服従のフランス(LFI)」は暴動を扇動しました。
暴動の被害としては、全国各地の商店1,500〜3,000店舗が襲撃・略奪され、リモージュの市庁舎などの公共施設が破壊・放火され、警察官ら1000人が負傷・1人が死亡したことが挙げられます。一方、極右政党の「国民連合(RN)」は、今回の暴動を批判している立場です。
【分析】フランス全土の暴動は予兆に過ぎず はるかに大きな社会と政治の危機が待ち受ける
https://www.cnn.co.jp/world/35253781.html「率直に言って、我々は厄介な事態に直面している」。フランスのルコルニュ首相は19日にそう述べた。

