悩み抜いた末の判断だった
私は今日午後、安倍さんの近親者から「現場の病院から『蘇生は不可能』と連絡を受けた」との一報を受けました。
そして20分後、同じ人物から「延命措置(輸血)を止め次第死亡の発表をする」との情報が入りました。その後立て続けに、他の複数の情報筋からも「延命措置(輸血)を止め次第死亡の発表をする」「死亡確認のため家族が奈良に向かっている」との情報が入りました。
私は独自のルートを使って、ご家族にこの事実が確実に伝わっていることを確認して、さらに安倍さんの他の近親者や関係各位にも確認をした上で、皆さんに報告しました。
「ご家族の知る前にSNSで書くとはけしからん」
「情報リテラシーが欠如している」
などと批判する方がいますが、ご家族にどのような情報がどのように伝えられたかを事前に確認していますから、「ご家族が知る前に発表した」という批判はあたりません。
また、ご家族に情報が伝わり、昭恵さんが奈良に向かったことを確認した後も、さらに十分な時間をとって各方面に二重三重の確認を取った上で公開したのであって、ご家族への配慮や情報リテラシーの面でも問題があったとは思いません。
「政府が正式に発表するまでは報道すべきではない」という方もいますが、NHKの死亡の第一報は「自民党幹部によると、安倍元総理の死亡が確認された」というものでした。
総理辞任や要人の死亡情報は、どのように報道するか非常に難しい。
私も今回の書き込みについては、悩み抜いた末「確認された情報は出来るだけ早く報道する」というジャーナリズムの基本に立ち返って最終的に判断しました。
ご意見はいろいろあるでしょう。皆さんの意見を真摯に受け止めながら、今後も記者として精進していく所存です。
(6月8日山口敬之Facebookより転載)
著者略歴
1966年、東京生まれ。フリージャーナリスト・アメリカシンクタンク客員研究員。90年、慶應義塾大学経済学部卒、TBS入社。以来、25年間、報道局に所属する。報道カメラマン、臨時プノンペン支局、ロンドン支局、社会部を経て2000年から政治部。13年からワシントン支局長を務める。16年5月、TBSを退社。著書に『総理』(幻冬舎)など。