長年の定点観測の実績
本書を読んでいると、「都市動物」たちも相互に影響を及ぼし合って、勢力を広げたり狭めたりしていることがわかる。
例えばハクビシンなどと並んで東京二十三区内でも容易に発見されるようになったアライグマは、アズマヒキガエルの卵を食べてしまうそうだ。それにより、アズマヒキガエルは絶滅危惧種指定を受けるまでに個体数を減らしているという。
また、動物たちも自然環境にのみ生息するわけではない。次第に都市に適応し、都市型の生き方、生活スタイルを身につけていく。ある動物の生息地が都市へと移動すれば、その動物をエサにしていた他の生き物や、逆にエサにされていた動物たちにも変化が生じる。
自衛隊が加勢せざるを得なくなった熊対応に関しても、熊とその食べ物、人里と熊の生息地などはもちろんだが、より広い視点から人間生活と自然のあり方をとらえ直すことで、より根本的な原因や、有効な対策が見えてくる可能性もある。
ミクロな視点から「都市動物」と都市の自然を定点観測し続けてきた著者のアンテナが、今こそ注目されるべき時なのかもしれない。
ライター・編集者。1980年埼玉県生まれ。月刊『WiLL』、月刊『Hanada』編集部を経てフリー。雑誌、ウェブでインタビュー記事などの取材・執筆のほか、書籍の編集・構成などを手掛ける。

