高市政権がとるべき〝5つの解〟
では高市政権はどう動くべきか。結論は明確だ。「必死の国益確保」である。第一に、ディールの中核である関税レジームは、下級審違法・最高裁係争中という“構造的不確実性”にある。このアキレス腱を突き、「合衆国憲法および連邦法の適合性に関するリスク軽減」を大義名分に、枠組みの再設計を米側に求めるべきだ。具体的には、
1. 投資は「義務」ではなく「任意」にする。日本企業が民間の経営判断に基づいてアメリカへ投資し、政府は税制やJBIC・NEXIなどで後押しする形に戻す。案件をアメリカだけで決めるのではなく、日米の共同委員会で公平にチェックできるようにする。
2. 関税は“最高裁の判断に連動”させる。もし最高裁がIEEPAに基づく関税を違憲(または権限超過)と判断したら、その瞬間に関税の取り決めは自動停止。あとは協議会で精算方法を決め、払いすぎた関税があれば返す仕組みを最初から約束しておく。
3. 「相互主義」を中身のあるものにする 日本だけが市場を開くのではなく、アメリカ側も規制や認証を日本と相互承認(MRA)するなど、見返りを条文に明記する。自動車の“追加試験ナシ”は特例で終わらせず、恒常制度に格上げする。
4. 日本のデータ主権を守る クラウドは米基準を押し付けられる形にしない。データがどこに置かれるか、どの国の法律が及ぶのかをはっきり書き、第三者監査も入れる。GAFAM依存にならないよう、官公需は乗り換え可能で複数利用できる設計にする。
5. エネルギー契約は“値段が動く前提”で LNGや石炭、原子力の長期契約は、市場価格に連動し、非常時には見直せる条項を入れる。国際価格との差が広がりすぎない上限も決める。固定費が重くのしかかる契約は、電気代を押し上げ、日本の体力を削るので避ける。
かつて、安倍晋三はトランプを“救世主”に見せたが、石破茂はトランプを“破壊王”にしてしまった。トランプには〝ふたつの顔〟がある。どちらを引き出すかはこちらの力量にかかっている。高市早苗は、その双方の残像を背負って登場した。
空母上でゴールデンエイジ到来を演出したのはよかったが、実際に抱え込んだのは“破壊王”が遺した不平等ディールである。トランプは高市に最大限の賛辞を送りながら、笑顔で不平等ディールの履行を求めてきた。日本は生き残れるのか。
(文中一部敬称略)
著者略歴
情報戦略アナリスト、令和専攻塾頭、雪風の会(DMMオンラインサロン) 主宰。公益財団法人モラロジー道徳教育財団研究員。1965年、東京都生まれ。中央大学卒業後、シドニー大学大学院、ニューサウスウェールズ大学大学院修士課程修了。22014年4月豪州ストラスフィールド市で中韓反日団体が仕掛ける慰安婦像公有地設置計画に遭遇。シドニーを中心とする在豪邦人の有志と共に反対活動を展開。オーストラリア人現地住民の協力を取りつけ、一致団結のワンチームにて2015年8月阻止に成功。現在は日本を拠点に言論活動中。著書に、国連の欺瞞と朝日の英字新聞など英語宣伝戦の陥穽を追及した『日本よ、もう謝るな!』(飛鳥新社)など。

