これは、自民党に入れ続ける人々のみならず、有権者である日本人全体を【劣等民族 inferior ethnicity】というテクニカルタームで侮蔑した【差別 discrimination】と受け取れます。
なぜなら、自民党に入れ続ける人々も入れ続けない人もほぼ同じ民族である日本人であるからです。もちろん、この発言は、【民族 ethnicity】という出自を根拠にした誹謗中傷ですから【民族差別 ethnicity discrimination】であるといえます。
青木氏がテレビの全国生放送で自分の非を認めて謝罪したことは勇気が必要なことです。人間には誰でも過ちはあるので、今後も頑張っていただきたく思います。キャンセル・カルチャーは、人間から機会を奪う残酷な仕打ちです。
その上で、青木氏の『サンデーモーニング』復帰には納得がいかない点が多々あります。
過去の批判が己に跳ね返ってくる
まず、青木氏は『サンデーモーニング』などを通して、他人の不祥事を完膚なきまでに叩きのめすなどキャンセル・カルチャーの中心にいたコメンテーターであることです。
青木理氏(2021年2月7日「批判止まぬ森会長発言」):いったいどんな後進国なんだ。女性差別の問題もそうだし、これで果して世界に向かって五輪をやりますという国なのか。
青木理氏(2021年2月21日「橋本氏が新会長 どうなる五輪?」):こんなみっともないことが起きちゃって、僕なんかは最初から、こんな五輪、呼ばなきゃよかったのになと。
青木理氏(2021年7月27日『東京五輪開幕』):エンブレムの盗用とか贈賄疑惑もありましたけれど、例えば組織委員会のトップが女性に対するあからさまな蔑視で辞めてしまう。それから障碍者に対する犯罪的なイジメが発覚して辞める。あるいはユダヤとか歴史認識に関する恐るべき無理解というものが次々に出て来ちゃった。多様性と調和とは真逆な、今の日本の現状が残念ながら本当に表沙汰になっちゃった。(中略)。五輪の後もこういう人権意識、あるいは歴史認識をきちんと問い直して、世界に通用するような歴史認識、時代認識、あるいは人権感覚を取り戻していかないと取り返しのつかないことになる危機意識を感じる一週間だった。
青木理氏(2021年7月27日『風をよむ』):結果的に理念がないどころか、差別とか、ホロコースト、歴史認識とか矛盾ばかり出てきた。日本の矛盾をどう考えるかをこれから考えなければいけない。
他者を差別主義者のように非難して退場させる青木氏ですが、日本人に対する「劣等民族」発言はこれらに勝るとも劣らない差別発言です。
また、上に示した青木氏の発言の多くは、批判の対象となっている人物が日本人であることを根拠に日本人全体を蔑視する【国籍差別 nationality discrimination】に他なりません。これらは極めてアクロバティックな【軽率な概括 hasty generalization】です。
また青木氏は、人権意識のカケラもないような【出自に訴える論証 genetic fallacy】を行なってきました。安倍晋三氏はその典型的な被害者です。