マイケル・サンデル教授:共和主義的理論の中核をなすのは、自由は自己統治の分かち合いに支えられているという考え方だ。この考え方は、リベラルな自由と矛盾するわけではない。共通禅について深く議論するには、みずから目的を選択し、他人にもそうする権利を認めるだけでは不十分である。公的に事柄に関する知識はもちろん、帰属意識、全体への関心、運命を左右されるコミュニティとの道徳的つながりも必要なのだ。
したがって、自己統治を分かち合うには国民が一定の市民道徳をもたなければ、あるいは獲得しなければならない。共和主義的な政治は、国民が信奉する価値観や目的に中立ではあり得ないことになる。共和主義的な自由の概念は、リベラルなそれとは異なり、形成的政治、つまり自己統治に必要な特性を国民の中に培う政治を要求するのである。
例えば、日本は一つの共同体であり、その構成員である日本国民は他国民とは異質な道徳観を共有しています。ただし、日本国民がこれを共有できなくなれば、世界にとって唯一無二の存在である日本という共同体を維持することができなくなるのです。
これは、世界から日本という多様性が一つ消えて画一化(下図参照)することを意味しており、世界にとっても不利益なことです。
つまり、特定の国家が、移民を受け入れるにあたっては、その国家の道徳観の共有の可否を要件とすることが重要であり、道徳観を共有できない人物を移民として受け入れることは、国家にとって存亡の危機となるのです。
その意味で、共同体の構成員に関わる移民問題において、無制限に「多様性」という言葉を振りかざすリベラルの主張は、必ずしも世界にとっては有益とは言えないのです。