【読書亡羊】中国は「きれいなジャイアン」になれるのか  エルブリッジ・A・コルビー『アジア・ファースト』(文春新書)

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その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


平和追及が「非道徳」となる事態

最後に、明らかに日本へのメッセージと取れる一文をご紹介しよう。

確かに平和は良いことです。平和を希求することはある意味で政府の「義務」とも言えるでしょう。「平和」は、あなたの革新的な利益が守られる限りは良いものだし、追及されるべきものだと思います。ところが、他国があなたたち国民の核心的な利益を脅かしている場合はどうでしょうか? 
政府がこのような状況において、それでも平和を求めるのであれば、それは逆に「道徳的ではない」ことになります。むしろここで政府の「道徳的な立場」は「平和の追求をやめて、安全と国民の利益を守ること」になるはずです。

2025年、日米関係や東アジアの安全保障環境はどのように推移するか。その行方を占うために、読んでおきたい。

梶原麻衣子 | Hanadaプラス

https://hanada-plus.jp/articles/712/

ライター・編集者。1980年埼玉県生まれ。月刊『WiLL』、月刊『Hanada』編集部を経てフリー。雑誌、ウェブでインタビュー記事などの取材・執筆のほか、書籍の編集・構成などを手掛ける。

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読書亡羊 書評 梶原麻衣子

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