畠山澄子氏:広島と長崎の被爆者の方々と活動をしてきて、被爆者の人たちが分け隔てなく、相手が誰であっても、被爆の実相を伝えて、命の尊さを語り、核兵器廃絶と平和を訴える姿に物凄く感銘を受けてきた。その言葉や姿勢が世界に伝わる姿も見てきた。
今年の平和式典は、広島がイスラエルを呼んだ。長崎が呼ばなかった。長崎に反発してEUとG7が参加しなかった。これは議論が本質からズレてきていて、すごく違和感を感じる。
そもそも平和記念式典というのは、絶妙のバランスの中で情勢が変わっても、各国が核なき世界への実現を誓う場であったはずで、だからこそ招待されなかった国も、今回参加しなかった国も、そういった国が核保有国であることも含めて、被爆地に来てもらって、被爆者の声を聞いてもらう、聞かせる必要があると思うし、そこで知事や市長が何を語るかが重要だ。
全くもって畠山氏のおっしゃる通りです。招待国の選定をめぐる昨今の議論は平和記念式典の本質から完全にズレています。例えば、4月21日放映のサンデーモーニングで次のような発言がありました。
安田菜津紀氏:これだけの女性と子どもを含んだ凄惨な事態をなぜ国際社会が止められずにいるのか。それに関連しては、日本の中でも実は気になる動きがあって、8月6日に広島で平和式典が行われるが、そこに、ウクライナに対する軍事侵攻を続けるロシアが招待されないという一方で、イスラエルに対しては変わらず招待状を送るということだ。
まず、疑問に思ったのはその理由だ。「イスラエルの攻撃については世界各国の判断が定まっていないため」と広島市は説明しているが、あと何人のガザの人が殺されたら、あと何人の女性たちが犠牲になったら、あと何人の子どもたちが孤児になったら、広島市は他国の顔色を見ずに主体的な判断ができるのか。少なくとも国際平和都市と名乗るのであれば、そういうダブル・スタンダードではなくて、人権だったり人道だったり少なくとも国際法に基づいた態度を貫くべきだ。
【今週のサンモニ】「サンモニ」の”恐喝”方法|藤原かずえ | Hanadaプラス
https://hanada-plus.jp/articles/1509『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。
この安田氏の主張に対してもコメントしましたが、広島平和式典の目的は、平和の実現を希求することです。
主催者である広島市が「どの国が悪であるか」を判定する式典ではなく、戦争当時国を排除する式典でもありません。式典の目的を考えれば、すべての国・地域を招待するのが合理的です。全ての国を招待した上で、式典において平和を乱す覇権国家にこっぴどく説教してやればよいのです。
そもそも核戦争をやりたいと考える平和国家はありません。核装備は、核戦争を抑止して国民の生命を守るギリギリの判断なのです。もちろん、拒否的抑止が可能となる日が来れば、核廃絶は可能となります。
その可否は覇権国の核を無力化する科学技術の開発にかかっているのです。その意味で、日本のような平和国家にこそ、軍事研究は極めて重要であると言えます。