「ブリキ男」は実在する
♪Somewhere over the rainbow way up high♪
ジュディ・ガーランドが歌った『虹の彼方に』が頭に鳴り響いている。
この歌は映画『オズの魔法使』の劇中歌だ。竜巻でオズの国に飛ばされてしまったドロシー。エメラルド・シティに行きオズの魔法使いに会えばカンザスの自宅に戻れる。
それを信じて黄色いレンガの道をたどって行くのだが、道中にライオン&案山子&ブリキ男に出会う。ここで注目なのがブリキ男だ。
ブリキ男は心を持たないので心が欲しいと望んでいる。心がないってどんな状態って思うが、実際、そう感じる人間がいるのだ。
エール橋本、東京ペールワンという漫才コンビの一人で自分と同じ年の男。橋本さんは、心がない事で有名で行動や言動が常に心がない。もちろん独身で長い事彼女もいない。
彼女がいないというと不細工不潔男を想像するかもだが、橋本さんはそれとは違う。
まともな容姿とスタイルで不潔でもない。
最近、自分が主催するお笑いライブ後に”男子会“と銘打って横須賀歌麻呂(テレビに出る事を望んでいない下ネタ芸人)と橋本さんの三人で打ち上げをする事がある。
この時、色々と情報交換するのだが二人の話は興味深い。横須賀の恋愛論は全てAVが基本。AV嬢が語る言葉が基礎となり全ての女子分析をしている。
ドエロなネタをやっているが経験人数が以上に少ないので、こういった思考になるようだ。
素人ものAVを本物素人が出演していると今でも信じていて、世の中ヤリマンだらけだと思い込み女性に対して不信感を抱いている。全ての女子に失礼な男だ。
女性器大好きなのでカフカの『変身』のように将来は虫になりたいと考えていて、虫の中でもケジラミを希望している。ケジラミになって女性の陰毛の中で暮らしたい。それが横須賀歌麻呂の夢だ。
「寂しい」がわからない
横須賀の話をさかなに「いいねー」とビールをグビグビ飲む橋本さん。「いいねー」と共感する橋本さんの言葉には一切心が籠っていない。
橋本さんの事を心がないと感じるようになったのは、彼が寂しいとか人恋しいとか辛い(失恋)などの感情が無いという事がわかったからだ。無いというより、そういった感情がわからないと言った方が正解かもしれない。
「好きな人が出来た時、一緒にいたいなって思わない?」
「好きな人? うーん、好きって感情を皆さんよく言いますよね? あれって何です? どんな感じになるのですか?」
返答はこんな感じ。
「たまに寂しい時ってない? 人恋しいとか、あったりするでしょ?」
「寂しい? 寂しい…?」
橋本さんの脳内には寂しいというデータは無いようだ。
こんな人だから、皆で中華料理屋さんに行き色々頼んでシェアしようなんて話をしていても、一人だけ「Aセット下さい」って注文したりする。
一人でハトバスツアーに行ったり、一人でイチゴ狩りやケーキバイキングに行く橋本さん。他人と共存する事を好んでいない。
先日、嫁の友達で橋本さんの事を「かっこいい、素敵な男性」という女性がいたので二人を引き合わせLINE交換させた。
翌日、橋本さんからLINEが来て「昨日の人にイベントチケット販売して良いですか? ノルマがありチケットバックもあるので」と書いてあった。
仮に自分が橋本さんの立場だったら、自分が出演するイベントに招待するだろう。だが橋本さんは違う。近寄る女子からは骨の髄までしゃぶりつく。
髄液をちゅうちゅう吸って残った骨を煮込んでスープを作り、最終的には骨を部屋のオブジェにするタイプだ。橋本さんの部屋には世界最大規模の地下墓地「カタコンブ・ド・パリ」より女性の骨があると言われている。
心を持たないブリキ男、ドロシーと一緒にオズの魔法使いに会いに行って欲しい。橋本さんに会い別れの帰路は、必ず『虹の彼方に』が頭に鳴り響いている。