「日本は丸腰となるべき」というお花畑な主張
もちろん、国連安全保障理事会の決議によっては武力行使による制裁も理論上は可能ですが、そもそも今回の紛争の直接的な誘因はハマスのテロリズムにあり、その可能性はゼロに近いと言えます。今回も含めて多くの国際紛争の当事国に対する制裁は、いずれかの常任理事国の利益に反するので、国連軍が即時に機能する可能性は極めて低いと言えます。
このため、主権国家には、侵略を回避するための安全保障(セキュリティ)に加えて、侵略時の攻撃から国民の生命を守る安全確保(セーフティ)の対策を備えておくことが必要となります。
しかしながら、このような当前の国防対策を日本が行うことに対して、安易かつ無責任に繰り返し反対してきたのが『サンデーモーニング』なのです。典型的な例を一つ挙げます。
周防雅之氏(2014/05/11):憲法にある高い理念を維持する方が今の時代に即している。丸腰でいることの強さを考えるべき。外交の時の日本の最大の武器になるはず
憲法九条を確信的に誤読してきた『サンデーモーニング』は、【軍事力 force】ではなく【外交 diplomacy】が平和を構築するかのように主張してきましたが、軍事力・経済力といった実在する【ハードパワー hard power】としてのセーフティの裏付けがない場合、政治力や文化力といった観念的な【ソフトパワー soft power】としての外交は【信憑性がない increditable】ため、戦争抑止や休戦の手段として有効に機能することはありません。
「日本は丸腰となるべき」というゼロ・セーフティを求める【空想的平和主義 utopian pacifism】の主張は、【拒否的抑止 deterrence by denial】を無効化する極めて非論理的でナイーヴで無責任な「お花畑」といえます。
戦争回避のセキュリティが突破された場合、日本国民の生命を保障するものは、極悪非道の侵略者の良心のみとなってしまいます。実際、現在のパレスチナが置かれている状況は、圧倒的な軍事力を持つイスラエルの良心を引き出すのみです。ハマスは最初から絶望的な抵抗を続けているのです。
もちろん、【外交交渉 diplomatic negotiation】は極めて重要な紛争解決の方法です。外交交渉とは「自らを拘束することで敵を拘束するもの(トーマス・シェリング)」であり、論理的には紛争当事国を説得できる拘束条件を提案することに尽きます。
このような状況下において、空想的平和主義を展開してきた田中優子氏がどのような外交交渉の具体的アイデアを示すのか注目していましたが、その結果が「立ち止まれ」という何の具体性もない【至上命令 categorical imperative】による【義務論 deontology】のみでした。
そもそも彼女の属するコミュニティはこのような義務論を乱発しています。
「戦争への道歩むな」女性らグループが相次ぎ声を上げる 岸田政権の敵基地攻撃能力・防衛費倍増方針に反対:東京新聞 TOKYO Web
https://www.tokyo-np.co.jp/article/230101昨年12月に閣議決定された敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有や防衛費倍増を明記した安保関連3文書に反対する、女性を中心とするグループの集...