【読書亡羊】中国軍人の危険な書、なぜ「台湾統一」の項は削除されたのか  劉明福『中国「軍事強国」への夢』(文春新書)

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その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


「『平和統一』の幻想を捨てよ」とは言うものの……

中国では刊行できなかったという台湾有事についての記述も興味深い。一貫して「中国にとって台湾統一はあくまでも対外戦争ではなく内政なので口を出さないでほしい」という姿勢を取っており、第5章ではこう書いている。

米国はある「論理」を世界中にプロパガンダとしてまき散らしている。それは「中国と台湾は平和的に統一しなければならない。台湾問題は平和的に解決する以外に道はない。武力を行使してはならない」という論理だ。これは一見すると文明的で平和的だ。しかしこの理論は、中国の主権に対する最大の侵犯であり、台湾独立勢力への最大限の擁護に他ならない。

台湾への統一戦線工作や国際的な宣伝工作において、「平和的統一」の方が、台湾返還の問題を解決していくうえで望ましいのかもしれない。しかし国家統一を実現する根本的な戦略的指向と軍事的戦略においては「平和的統一」への幻想は捨てるべきだ。武力による統一のための戦機を模索し、武力統一を断固として推し進めるべきだ。

こうした中国軍人の物言いは「台湾海峡、波高し」の言説に使われがちだが、よく読むと矛盾も見えてくる。「いやいや、習近平だって体面上とはいえ『なるべく平和統一がいいが、もしもの場合は武力統一も放棄しない』と言っているのだから平和統一の方が上位だとは思っているのでは?」と突っ込みたくなってしまうからだ。

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