【今週のサンモニ】勘違いで「核抑止」を徹底否定|藤原かずえ

【今週のサンモニ】勘違いで「核抑止」を徹底否定|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。さて今週は……。


いまさら得意げに語られても……

さて、番組コメンテーターによるスタジオ・トークにおいてもナイーヴな主張が繰り広げられました。

寺島実郎氏:「核から身を守るためには核で守ってもらわなければいけない」というロジックである核抑止論をよく冷静に考えてみると、「相手は正気で合理的判断をする力があるから、こっちが核兵器を持っていたら核攻撃されるかもしれないので核攻撃しない」という前提に立っている。

相手は正気か、合理的判断力があると思っているけれども必ずしもそうじゃないというのがロシアや北朝鮮の現状だ。そういう状況の中で、新しいルール形成のために前に出なければいけない。

例えば、核を持っている国は非核保有国を核攻撃してはいけないという国際ルールを確立するための先頭に出る。要するに日本が米国にとって、良い意味での厄介な同盟国としてのこだわりを見せなければいけない。

核抑止における戦略的な意思決定に関わる数学的な方法論として【ゲーム理論 game theory】があります。

1950年代のランド研究所でトーマス・シェリングが議論した古典的なゲーム理論では、相手が完全な合理性をもつことを前提としましたが、現在の進化したゲーム理論では、人間の認識能力の限界に依存する限られた合理性である【限定合理性 bounded rationality】を前提とした核抑止のシミュレーションが普通に行われています。実は寺島氏が得意げに語る非合理な人物の行動パターンは四半世紀も前から数学的に探求されているのです。

また、寺島氏は「核を持っている国は非核保有国を核攻撃してはいけないという国際ルール」の確立を提案していますが、「ならず者国家」の専制支配者は必ずしも「正気で合理的判断をする力」をもっているわけではないので、ルールを遵守するとは限りません。

司法権が存在しない国際社会において、「ならず者国家」に覇権を諦めさせるためには、強制力が担保されない国際ルールの構築ではなく、ならず者行為に対して政治的・経済的制裁を発動する国際秩序の構築こそが求められるのです。

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