2023年になり状況はさらに悪化した。1月から全国の糧穀販売所で米の供給が途絶えた。平壌市でも大部分の地域で販売所による食糧供給が出来なくなった。平壌市には19区域と4郡があるが、そのうち13区域と4郡で販売所の食糧供給が止まった。中心部の6区域(中、普通江、牡丹峰、船橋、大同江、万景台)の販売所だけが米を供給していたが、5月から平壌市中心区域の販売所も閉鎖されている。労働党と政府の高級幹部には国家が運営している高位級供給所(2号供給所)で食糧を正常に供給していたが、6月からそれも止まった。
軍将校や安全員、保衛員は今年5月まで食糧配給(1人1日700グラム)を受けていたが6月にそれも止まった。その家族(同500グラム)への配給は昨年11月頃から止まっている。
一部の中央機関や工場では、独自に食糧を購入し、職員や従業員に配給している。
北朝鮮の新しい「苦難の行軍」は現在進行中で、平壌市でも病死者や餓死者、そして冬には凍死者が多数出ている。(2023.07.18国家基本問題研究所「今週の直言」より転載)
モラロジー研究所教授、麗澤大学客員教授。1956年、東京生まれ。国際基督教大学卒業。筑波大学大学院地域研究科修了(国際学修士)。韓国・延世大学国際学科留学。82〜84年、外務省専門調査員として在韓日本大使館勤務。90〜02年、月刊『現代コリア』編集長。05年、正論大賞受賞。17年3月末まで、東京基督教大学教授。同4月から、麗澤大学客員教授・モラロジー研究所「歴史研究室」室長。著書に『でっちあげの徴用工問題 』など多数。