3月27日に開かれた大井川利水関係協議会(静岡県庁、筆者撮影)
渡邉光喜参事の真っ赤な嘘
さらに、久保田崇・掛川市長は「山梨県内の調査ボーリングについて、2月21日に再開したが、流域市町へ連絡がなかったのはなぜか」などJR東海に直接、尋ねた。
当然、JR東海は静岡県へ山梨県内の調査ボーリングについては詳しく説明している。大井川利水関係協議会の規約で、“手足を縛られた”JR東海が直接、各市町へ連絡できない決まりを久保田市長は承知していなかった。
「山梨県内の調査ボーリングをやめろ」とあれだけ騒いでいるのに、こんな基本的な情報さえ県は流域市町へ伝えていないのだ。
田村典彦・吉田町長は「田代ダムの取水抑制を行った場合、発電に影響ないと言っているのか? もし、発電に影響がないならば取水抑制をずっとやってもらっても問題ないのでは」と疑問を投げ掛けた。次回の水利権更新時に取水抑制分を上乗せして放流すべきという、まさに水利権にからむ発言をしたのだ。
東京電力RPの発電の影響分について、JR東海は経済的な補償をすると主張してきた。当然、静岡県は承知しているが、各流域首長らにJR東海の説明を伝えていなかっただけだ。
拙著『知事失格』で紹介したが、2022年4月24日、静岡市内の「反リニア」団体の会合に、リニア問題担当の渡邉光喜参事が講師として出席、「大井川広域水道企業団の水利権の毎秒2トンは、JR東海のリニア工事による減少分と同じである。
水道用水として取水する分が減少するのに、JR東海は大井川の水に影響がないと言っている。大井川流域で水が減る影響が出てからでは遅い」などと真っ赤な嘘で煽った。
事程左様に“腐った県庁組織”は流域市町などに「命の水を守る」の“真実”どころか、基本的な情報さえ伝えていなかったのだ。
3月27日の大井川利水関係協議会開催は、これまで都合よく流域市町を利用してきた県にはとんだ“藪蛇”となった。
先述したように、流域市町長は結束して、国交省の強い指導力を要請した。流域市町はようやく、県に一任していたことが誤りだとわかったのだ。
渡邉参事らは5月7日から、「反リニア」団体の要請にこたえ、静岡市、牧之原市、焼津市、島田市の4会場で出前講座を開く。流域市町で「反リニア」を煽る役割を果たすのだ。
流域市民たちは“腐った県庁組織”の正体をちゃんと見極めるべきだ。
「静岡経済新聞」編集長。1954年静岡県生まれ。1978年早稲田大学政治経済学部卒業後、静岡新聞社入社。政治部、文化部記者などを経て、2008年退社。現在、久能山東照宮博物館副館長、雑誌『静岡人』編集長。著作に『静岡県で大往生しよう』(静岡新聞社)、『家康、真骨頂、狸おやじのすすめ』(平凡社)などがある。