とんでもないご都合主義
さらにいえば、共産党は他の組織でのわいせつ事案や性犯罪が発生したとき、容赦なくその組織の責任を追及してきた。
2018年1月30日 には共産党の機関紙「しんぶん赤旗」が、在日米軍の兵士による性犯罪を取り上げ、「犯罪の多くは独身兵が引き起こしています」と書いている。独身だから、兵士だから…という見方は、同党の歪んだ認識を示している。
この記事は「米兵や軍属の数が増えれば、それに比例して犯罪が増えます」と結論づけているが、性犯罪を利用したとんでもないこじつけ記事だ。
自衛隊に対しても共産党は厳しい批判を浴びせてきた。
昨年10月に、防衛大臣が陸上自衛隊内での性暴力事件を認め、被害者の元女性自衛官に謝罪した際に、共産党の田村智子政策委員長(副委員長)は記者会見で「自衛隊内でいかに性暴力、セクハラ、マタハラが行われてきたのかを徹底して調査し、自衛隊の組織的な問題として深刻に受け止めて、性暴力もハラスメントも一掃するという自衛隊の組織的改革を行うべきだ」(昨年10月30日)と述べている。
ところがAが女性トイレに侵入して盗撮事件を起こした件について、記者から「なぜ共産党の現職の衆参の女性議員たちは(非難の)声を上げないのか」と質問された田村氏は「私たちは性犯罪、性暴力に対して『認められないことだ』という立場を鮮明に持っている。声を上げる、上げないということはその私たちの立場に何か関係するでしょうか? 私はしないと思いますけど」と開き直っている(今年1月27日の定例記者会見)。
自衛隊には徹底調査を求めておきながら、自分たちの問題になると「関係ない」というとんでもないご都合主義だ。 党幹部のわいせつ犯罪について声を上げられない党に「痴漢ゼロ」などできるはずがない。
再犯予備軍を野に放つ恐れ
なぜ、高い道徳心をもっている〝はず〟の共産党員がわいせつ犯罪にはしるのか? この問題を共産党自身がよく考える必要がある。
Aがバリバリの党幹部だったときに自身のフェイスブックに投稿した文章がスクリーンショットで残されている。
「『風俗による性欲の処理が性犯罪を防ぐ効果がある』といった歪んだ風潮が社会の中にあるのも事実だと思います。実際には男性による女性への優越感と支配欲を拡大し、むしろ性犯罪を助長していることを明らかにしていきたいですね」(2013年5月14日)。
このAの考えはA独自のものではなく、共産党内では常に強調されている思想である。共産党員は、風俗店に行くことも、アダルトビデオやポルノ雑誌を見ることも、女性を「性の商品」として看做す人権侵害の〝悪事〟と捉えている。だが、その〝悪事〟を犯さない者もほとんどいないだろう。一般の人にとっては〝エッチな欲求〟を満たすことと〝犯罪〟との隔たりは大きいが、共産党員にとっては、いったん党の戒律を破り〝悪事〟に手を染めれば、〝犯罪〟との隔たりはそんなに大きくないのかも知れない。真面目な共産党員ほど注意してほしい。
性犯罪は再犯率が高い犯罪である。近年ではアルコールや薬物と同様に一種の依存症であると考えられるようにもなってきた。
だから、「痴漢は犯罪だ」とか「厳罰化すべし」といくら主張し、そうした運動が仮に実現したところで、根本的な解決にはいたらないだろう。
性犯罪を「病気」扱いして、犯罪者を免罪したいわけではない。再犯を防ぐには犯行に及んだ者の心の中にある根本原因に立ち入る必要があるということだ。
性加害者の更生には認知行動療法が有効であるといわれる。本人がカウンセリングを通じて、何が引き金(きっかけ)になって危険な衝動が起こるのかを知ることによって、問題行動を回避できるようになるという。
もちろん、依存症から抜け出し更生するのは簡単なことではなく、本人の自覚と努力が何よりも重要だ。だが更生できる環境があるかどうかは、周りの人たちも関わることでもある。
Aの更生についても共産党は一定の責任を負うべきだ。それでこそ「痴漢ゼロ」への第一歩になる。「除名したからもう関係ない」という態度では、再犯予備軍を野に放っただけになってしまう。