異常な状況を作り出したのは韓国
今月6日、韓国の朴振外務大臣は、旧朝鮮半島出身労働者について、韓国最高裁判決における日本企業の賠償を韓国の財団が肩代わりすると発表した。
なお、韓国側は旧朝鮮半島出身労働者の「賠償肩代わり」と言うが、昭和40(1965)年の日韓請求権協定で旧朝鮮半島出身労働者の請求権の問題は完全かつ最終的に解決しており、そもそも賠償を命じた平成30(2018)年の韓国最高裁の判決が国際法上おかしい。
この判決後、日本政府は日韓請求権協定に基づく「協議」を韓国政府に要請したが韓国は応じず、日本は協定に基づく「仲裁」付託を韓国に通告した。第3国の仲裁委員が入る中立的な形であり、韓国側は仲裁に応じる協定上の義務を負っているが、韓国側はこれにも応じなかった。
こうした異常な状況は韓国が作り出しており、この問題は何ら日本側において対処すべきものでなく、韓国が国内においてどう処理するかの一点であった。
韓国最高裁判決では、原告が請求しているのは未払賃金や補償金ではなく「強制動員慰謝料請求権」に基づく慰謝料であり、「強制動員慰謝料請求権」は日韓請求権協定に含まれないとした。だが、協定の交渉過程を見ればこれらは明らかに否定される。
韓国は、昭和35(1960)年の交渉において「対日請求要綱」を日本側に提出し、その中で、「韓国法人又は韓国自然人の日本国又は日本国民に対する日本国債、公債、日本銀行券、被徴用韓人の未収金、補償金及びその他の請求権の弁済を請求する」とした。
そして韓国側は、昭和36(1961)年の交渉において、「強制的に動員し、精神的、肉体的苦痛を与えたことに対し相当の補償を要求することは当然だと思う」と述べたが、これに対し日本側は、「当時は日本人として徴用されたわけで、これらの者に対し韓国側で、日本人に対しとられていたと同じような援護措置をとってほしいということか、又は、別の立場で考えてほしいということか」と尋ねた。
この質問に韓国側は「新しい立場で要求している」と答えた。すなわち韓国側は、戦後の混乱で未払となっている賃金だけでなく、慰謝料を含む要求をしていることを明言しているのである。
「完全かつ最終的に解決された」
これらの請求について、昭和36(1961)年4月の交渉で日本側は、「日本の一般法律によって個別的に解決する方法もあると考えるが、この点はどのように考えるか」と韓国側に質問した。これに対する韓国の回答は「解決方法としてはいろいろあり得るが、我々は国が代わりに解決しようということ」であった。
さらに翌5月の交渉において、日本側は再び「個人に対して支払って欲しいということか」と尋ねたが、韓国側は「国として請求して、国内での支払いは国内措置として必要な範囲でとる」と答えている。
こうした交渉を経て締結された日韓請求権協定では、「賠償」ではなく「経済協力」として日本が韓国に無償で3億ドル、有償で2億ドルを供与し、日韓の請求権問題は「完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する」こととなった。
そして、署名の日より「以前に生じた事由に基づくものに関しては、いかなる主張もすることができない」ということが決まったのである。
なお、日韓請求権協定についての合意された議事録では、「完全かつ最終的に解決されたこととなる請求権に関する問題には、『韓国の対日請求要綱』の範囲に属するすべての請求が含まれており、対日請求要綱に関しては、いかなる主張もなしえないこととなる」と規定されている。
韓国側においても、1965年に韓国政府が発行した「大韓民国と日本国の間の条約及び協定の解説」には、「被徴用者の未収金及び補償金などが全て完全かつ最終的に消滅することになる」と記載されている。
また、翌1966年に制定された「請求権資金の運用及び管理に関する法律」5条1項は、大韓民国国民が有する1945年8月15日以前までの日本国に対する民間請求権は、この法に定める請求権資金の中から補償しなければならない、とされた。