理解に苦しむ朝日の社説
侵攻開始一年の2023年2月24日の朝日新聞社説は、「冷戦後の西側の傲慢」がロシアに与えた影響を指摘している。
だがそれを言うなら、ソ連崩壊後も国連安保理理事国にとどまり続ける核大国・ロシアが感じてきた「引け目」など、敗戦国日本が背負ってきたものとは比べ物にならないだろう。
朝日新聞が日本国内の世論や政治の右傾化に同情的だったことは一度もないが、なぜそれがロシアになると「隣国への侵攻」においてさえも汲んでやるべき一要素になるのか、理解に苦しむ。
(社説)ウクライナ侵攻1年 戦争の理不尽 許さぬ知恵を:朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/DA3S15564601.html「ウォーン」。サイレンが鳴り響く。授業が打ち切られ、生徒たちはカバンを背負って、校舎地下のシェルターに一斉に階段を駆け下りていく。ウクライナの首都キーウで、1年前まではなかった「日常」である。 11…
国際秩序に挑戦するロシアの行為を、ともすれば「米国一極支配に対する、やむにやまれぬ弱者の一撃」ででもあるかのように擁護する向きが日本国内で絶えないのは、「ロシアが(日本より)気の毒な国だから」という認識があるからかもしれない。あるいは、「ウクライナびいきにならず、アメリカとも距離を取り、日本が仲介役を果たすべきだ」という意見も同様だ。
だがこれは大きな間違いだ。
鶴岡氏はあとがきで東大先端研の小泉悠専任講師の言葉を引き、「チェスで言えば日本はアメリカや中国、ロシアのような『プレイヤー』ではなく、大国の論理で動かされる『駒』である」という視点が重要だと述べる。
その通りで、実際の日本は、首相がロシアと話が出来ないどころか、ウクライナ入りすることすらままならないのが現状なのだ。一体どうやって停戦を仲介するというのか。当初ヘルメットの供与だけ行うとして責められたドイツの姿を日本は笑うことはできない。
日本が学ぶべきは「駒」の視点、それゆえの苦悩であり、欧州各国の動向から学ぶことは多い。日本の防衛費増大に「いつか来た道」との懸念を示す向きも絶えないが、今や日本は侵攻を企図するロシア側でなく、周辺のプレイヤーから領土を脅かされかねないウクライナに近い立場であることも知らなければならない。
何よりもまず、「ウクライナはどうしてすぐに降伏して、停戦しないんだろ?」という疑問をお持ちの方に、本書をお勧めしたい。
ライター・編集者。1980年埼玉県生まれ。月刊『WiLL』、月刊『Hanada』編集部を経てフリー。雑誌、ウェブでインタビュー記事などの取材・執筆のほか、書籍の編集・構成などを手掛ける。