【読書亡羊】「どうしてウクライナは降伏しないの?」という前にまずはこれを読もう 鶴岡路人『欧州戦争としてのウクライナ侵攻』(新潮選書)

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その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする週末書評!


「停戦しても終わらない戦争」

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この一年、驚かされたのは日本国内の「戦争観」だった。「ゼレンスキーは早く降伏すべきだ」という降伏論から始まり、「ウクライナに武器を与えるから戦争が長引くんだ」「早く停戦しろ」という声が多くあり、今なお聞こえてくる。ここへきて朝日新聞系列のサイト「GLOBE+」も「かき消される即時停戦の声」という記事を掲載している。

ウクライナ侵攻、「戦え一択」にかき消される即時停戦の声 被爆地・広島からの訴え:朝日新聞GLOBE+

https://globe.asahi.com/article/14842713

ロシアによるウクライナ侵攻が始まって間もなく1年。プーチン政権の暴挙に対し、日本ではウクライナ支持が広がっているが、「戦え一択」という熱気に包まれ、即時停戦や戦争反対の声が上げづらい状況になっている。ウクライナ、ロシア双方に犠牲者が増...

こうした意見について鶴岡氏は本書で〈停戦しても終わらないのが今回の戦争〉と述べる。

ロシアの長期的な目的が「ウクライナの無害化」である以上、ウクライナがロシアを押し返し、一年前の状態にまで押し戻したとしても、ウクライナを潰したくて仕方がない核保有国・ロシアが隣国であり続けることに変わりはない。つまり、将来的な侵攻の可能性は停戦後も残り続ける。

かといってここで降伏し、ロシアによる占領を許せばウクライナ国民がどんな目に遭わされるか分からない。弾圧、虐殺の可能性は高い。だからウクライナは安易な停戦を受け入れず、戦い続けているのだ。

すべての戦争が、日本が降伏した1945年8月15日のように「白旗を上げれば戦争が終わる」わけではない。事実、この時もソ連は降伏後の日本に侵攻し、北方領土を奪い取っている。

こうした現実を前に、「そもそもウクライナが西側に近づかず、中立的な緩衝地帯として存在していればこんな目に遭わないのだ」と居丈高に述べる有識者もまだまだいるが、ウクライナからすればたまったものではない。少なくとも日米安保体制下にある日本がウクライナに説教できる立場ではないだろう。

さらには、「ロシアを追い詰めすぎた西側の責任」を持ち出し、結果的にロシアの行為の正当化に手を貸す声もある。

だが本書にもある通り、西側はウクライナのNATO入りを拒んできた。それでもウクライナが西側を頼り、軍事的に力をつけざるを得なくなったのは、ロシアによる2014年のクリミア侵攻があったからだ。

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