日本の自衛隊は中国の気球を撃墜できるのか|和田政宗

日本の自衛隊は中国の気球を撃墜できるのか|和田政宗

米国本土の上空を飛行した中国の気球が、2月4日、海上に出たところで撃墜された。実は、米国を飛行したものと類似の気球が複数回、日本上空を飛行していることが確認されている。はたして日本は米国と同じ対応ができるのか。


中国は自衛隊の「能力」を試している

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危惧しているのは、中国が無人偵察機や偵察用気球、偵察用ドローンで領空侵犯を繰り返し行ってくることである。中国は自衛隊が本当に撃ち落とせるのか試してくる可能性がある。日本が撃墜しない場合は、さらに増長して領空から深く入り込み偵察活動を行ってくる危険性が高い。

中国は「サラミスライス戦略」で、どんどん他国領域に入り込み、かすめ取ってくる。例えば、尖閣諸島においては、最初は漁船が領海の周辺部の接続水域に出現するというものであったがどんどんエスカレートし、漁船の領海侵入、中国公船の接続水域出現、領海侵入となった。こうしたことを防ぐためにも、明確な政府解釈の取りまとめと、必要であれば法改正を行わなくてはならない。

さらに、実際に偵察用気球を撃ち落とせる能力を自衛隊が持っているのかということも考えなくてはならない。米国上空を領空侵犯した中国の偵察用気球は高度1万8000~2万メートルの上空を飛行しており、米国はF22戦闘機で高度約1万7600メートルからミサイルを発射して撃墜した。

かなりの高高度であり、この高度まで上昇できる戦闘機は限られる。自衛隊のF15は同様の高度まで上昇できるが、撃墜すべき時にしっかり対応できる装備と能力の整備が求められる。

中国は戦闘機や艦船、ミサイルなどの直接的な軍備以外でも様々な手を使って、覇権を得るための手段を得ようとしている。情報戦、世論工作、サイバー戦を含め、我が国は中国の脅威に対するさらなる備えと運用や法令整備のスピードを上げていかなくてはならない。

月刊『Hanada』2023年3月号

日本国憲法「改定」

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