安倍元総理がご存命であれば……
今年も1年が終わろうとしている。忙しさとともに新しい年を迎える喜びがある年末のはずだが、今年は大いなる悲しみのもと暮れていこうとしている。7月の安倍晋三元総理の暗殺は、とてつもない衝撃と悲しみであった。容疑者の境遇から、安倍元総理にも暗殺された原因があるかのような論調があるが、全くそれはあたらない。
暗殺という非道であることに変わりはなく、民主主義の根幹である選挙運動中の銃撃であり、政治家の命を力ずくで奪ったという事実を我々は直視しなくてはならない。我が国の民主主義を守るためにも、暗殺を強く非難し、二度とこのようなことを起こしてはならない。
そして、悲しみとともに、安倍元総理が生きてくださっていれば、と思うことが多々ある。あまりにも偉大な存在であったことを痛感する。年末の防衛費増額における財源問題でもそうである。2027年度以降、毎年度不足するとされる1兆円の財源について増税の方向性が示されたが、安倍元総理がご存命であれば、もっと慎重かつ熟議を重ねた結論になったことと思う。
安倍元総理は「防衛予算は次の世代に祖国を残していく予算だ」と発言し、防衛国債発行の必要性を述べていたが、これは年末の自民党税制調査会の議論では全く排除された。私は安倍元総理がおっしゃった通り防衛国債の発行を最後まで税制調査会において進言したが、安倍元総理に近しく教わっていた方々の中にも増税容認の発言をした方もおり、安倍元総理に教わったことをそのまま実行しようと思う私などからすると驚きであった。
財源問題は来年1年かけて、政務調査会、税制調査会でしっかりと論議し、安定的かつ皆様が納得する形の枠組みを示していきたい。
黒田路線を継承するのか非継承なのか
対中国、対ロシア、対国際社会においても、安倍元総理がいてくださればと思うことが多くある。安保3文書の改定等で抑止力は高まるが、中国は台湾侵略、尖閣侵略を狙っており、いざ中国が侵略を始めた時には、日米同盟を軸に国際社会の支援が重要となる。
その際、戦後この上ない日米関係を築き、国際社会においてこれまでにない外交上の位置まで日本を高めて下さった安倍元総理がいらっしゃれば、国際社会との結節はより強いものとなったであろう。安倍元総理は、国際社会から強い信頼を受ける世界のトップリーダーであり、中国に対峙する時、また和平の時にも大きな力を頂けたことと思う。
しかし、安倍元総理はもういない。いざという時にそうした行動が取れるリーダーを我が国が輩出していくことが重要であるし、間に合わないのであれば皆が結束して力を発揮しなくてはならない。
そして、経済である。アベノミクスによって、その一丁目一番地である雇用環境は改善したが、新型コロナ禍で近年は厳しい面も出てきた。これを乗り越え、雇用環境の再びの改善、賃金アップ、所得向上のためには、アベノミクス路線をより強くするとともに金融緩和を継続することが重要である。
しかし、来年4月の日銀総裁人事で黒田路線を継続しない新総裁が誕生すれば、日本経済はまたデフレ不況に戻ってしまう可能性がある。
日銀総裁人事も、安倍元総理がご存命であれば岸田総理から相談を受け、黒田路線の継承が必要であることをアドバイスされたと思うが、現状においては誰になるのか、黒田路線を継承するのか非継承なのか全く不明であり、経済界や市場の不安につながっている。
日本経済の将来のためにも、黒田路線を継承する人物の日銀総裁を切に願う。