本質論から外れている「Jアラート」批判だが
北朝鮮が弾道ミサイルを連発している。11月3日朝には北朝鮮のミサイル発射を受け、Jアラートで国民保護情報(ミサイル発射)が発表された。
このミサイルは結局、日本海上空で消失したとみられ日本列島を越えなかったことから、Jアラートの精度についてニュースやワイドショーで取り上げられたが、これは本質論からは外れている。しかし、北朝鮮のミサイル開発がどの程度進んでいるのかを国民が把握する上では、このように細かく取り上げられることで理解は進むのだと思う。
今回、最終的にJアラートの情報を訂正することになった弾道ミサイルについては、現在、防衛省において検証が進んでいる。当該ミサイルは、ICBM(大陸間弾道ミサイル)で、2段目の切り離しに失敗し、弾頭を含む2段目以降が予定の軌道通り飛べば日本列島を越えて太平洋に到達していたものが、途中で爆発するなどして消失したとみられている。
結局、日本列島を越えていないのに不正確ではないか、という論については、私はそれはあたらないと考えている。今回のようにミサイル発射が失敗すれば、2段目以降が日本列島に落下する可能性もあるわけで、今回のような事案でJアラートで国民に警戒を呼びかけることは、全く問題ないと考える。
一方、発表が遅れたことについては、しっかり検証しなくてはならない。7時50分に北朝鮮からミサイルが発射されたとのJアラートが出されたが、その後、8時の2回目のJアラートでは、7時48分にすでに日本上空を通過したとみられると発表された。
実際には消失したため日本列島は通過していなかったわけだが、ミサイル分離が失敗していなければ、1回目のJアラートより先に北朝鮮のミサイルは日本列島を通過していたことになる。ミサイルが消失したためJアラートを出すか判断に迷って時間がかかったという報道がある。
だが、私が得ている情報では、弾道ミサイルとみられるものが発射されたとの情報はJアラートの発表より数分早く防衛省から関係各所に通報されており、日本列島を通過するかの軌道計算もそれほど時間はかからないわけで、判断と連絡、発表をいかに迅速に行うかの改善をしなくてはならない。
(写真は10月10日配信の朝鮮中央通信)
正確ではない『モーニングショー』の報道
具体的には、ミサイル探知→防衛省→内閣官房(Jアラート発表を判断)→総務省消防庁→自治体→防災無線という流れをいかに早くしていくか。内閣官房が速やかに発表を判断できる体制とシステムのなお一層の改善が必要である。
なお、本日8日のテレビ朝日『モーニングショー』で、Jアラートが防災無線や携帯電話から通知されるまでの時間について、防衛省から内閣官房、消防庁に伝えられ、地方自治体や携帯電話会社に届くまで「6~7分かかる」と放送されたが、実際は内閣官房が判断してから自治体や携帯電話会社に到達するまで最長でも35秒(総務省の見解)であり、正確ではない。
しかし、北朝鮮が日本を狙った時や今回のようにミサイル発射が途中で失敗した時は日本に着弾する可能性があり、発表は一刻を争う。発表までの時間の更なる短縮を図る必要がある。
そして、今回のJアラート発表時に私は仙台の自宅にいたが、携帯電話にはJアラートが通知されたが、防災無線は鳴らなかった。なぜかと思い調べてみると、仙台市には沿岸部を除いて防災無線そのものが無いということが分かった。
すなわち、携帯電話を持たずに外出した場合、ミサイルに関するJアラートが発表されても、何も分からないまま回避行動も取れず外で過ごすことになるのである。さらに調べると、仙台市以外でも街なかに防災無線が無い市が多くあることが分かった。
国民を守るため1秒でも早くJアラートの内容を伝えないとならないのに、そもそも全ての国民に伝わる形になっていないのはまずい。国において指針を示し、自治体全てで整備できるよう、国費の投入も考えるべきである。