自らを被害者とするロシアの論理
しかもロシアが使うのは「武力(ジャングルの掟)」だけではない。インターネットやメディアを使った情報戦にも注力している。これについては過去の書評でも取り上げているので参照されたいが、つい最近も良書が刊行された。
これまで民主主義に関する多くの著作をものしているラリー・ダイヤモンド『侵食される民主主義』(市原麻衣子監訳、勁草書房)は上下巻の大著だが、上巻第6章の「ロシアによる世界的な攻撃」で、現在のロシア、つまりプーチンの「世界観」が簡潔に提示されている。
「アメリカをはじめとする西側諸国は、ロシアを包囲し、弱体化させようとしている」
「ウクライナで起きた2004年のオレンジ革命や、2014年のユーロマダン革命は、いずれも欧米の介入煽動によって起きたものである」
「こうした邪悪な企てはロシアに脅威をもたらす」
こうした事態にロシアがとったのはどんな手か。その一つがソーシャルメディアを使った偽情報の拡散であり、他国の選挙への介入だ。それによって民主主義国家内に分断や疑心暗鬼を生じさせ、弱体化せしめようというのである。