中国共産党にとって彼女は重要な存在
北京は2005年頃から「華人参政」政策、すなわち「中国人の政治参加」の推進を始めた。これは「百年恥辱」というナラティブ(物語)と、相変わらず続いている反中的な人種差別主義を悪用した、党の統一戦線戦略における新しい戦術で、これ以降から北京に支援された中国系の人々が政党に所属したり、カナダ、アメリカ、ニュージーランド、オーストラリア、イギリスなどの国で立候補するようになった。(中略)
著名な中国系イギリス人の中には、統一戦線組織の役職者やメンバーになり、中国で会見する人もいる。2018年5月、北京の僑務弁公室は、中国系イギリス人に積極的投票を促し、選挙に立候補している多数の中国系イギリス人たちを称賛した。ここで特に注目すべきは、二人の中国系イギリス人である。
一人目は弁護士のクリスティン・リーである。彼女は北京、香港、広州、そしてロンドンにそれぞれ事務所を構えている。2006年、彼女は「イギリス華僑プロジェクト」(the British Chinese Project:中国語では「英国華人参政計画」)を設立した。
当時、彼女は「中国海外交流協会」のメンバーだった。彼女の中国共産党とのつながりは深い。なぜならロンドンの中国大使館の主任法律顧問や、僑務弁公室の法律顧問を務めたこともあり、また中国人民政治協商会議の海外メンバーでもあるからだ。
これらの役職は、彼女が党にとって重要な存在であることを明確に示している。彼女は、イギリス議会の中の「超党派中国グループ」(the Inter-Party China Group)の幹事でもある。
リーのイギリス政治への関与は、トニー・ブレア政権時代に始まったように見える。この頃の彼女は、ロンドンの労働党の下院議員で、労働党の「影の国際貿易相」を近年務め、大臣経験もあるバリー・ガーディナーと懇意(こんい)になっていた。
中国の国有企業による原発建設を強く支持
2017年にこうしたつながりを暴露したハンナ・マクグラスとオリバー・ライトは、ロンドン・タイムズ紙に次のように書いた。「その後に続いたのは……実りある交際で、最終的にはリーはこの下院議員と彼の所属する政党の両方に、20万ポンド以上の寄付をするようになった」というのだ。
ブレア政権で大臣を務めていたバリー・ガーディナーは、2007年、クリスティン・リーの「イギリス華僑プロジェクト」の会長に就任し、二人はウェストミンスターで友人を獲得する活動を始めた。この活動は、ガーディナーが2011年に「中国系イギリス国民の意見を代弁する……超党派グループを結成したことで大きく前進した」のである。
同会の副会長には、リーの子供の一人であるマイケル・ウィルクスが就任している。もう一人の息子であるダニエル・ウィルクスは、母親の法律事務所から給料をもらいつつ、ガーディナーの議会事務所でも働き始めた。
ガーディナー議員は、英中関係の緊密化と、中国の政府系ファンドによるイギリスへの投資を強く支持してきた。彼は中国の国有企業によるヒンクリーポイント原子力発電所の建設を強く支持したが、当時のテリーザ・メイ政権は国家安全保障上の懸念から、建設を延期した。
ロンドン・タイムズ紙によれば「労働党のある筋によれば、彼(ガーディナー)はヒンクリーポイントでの原発計画への中国関与に対する党内からの批判に強く反発していた」という。