英国議会で暗躍する「中国工作員」を実名告発!|クライブ・ハミルトン/マレイケ・オールバーグ

英国議会で暗躍する「中国工作員」を実名告発!|クライブ・ハミルトン/マレイケ・オールバーグ

1月14日、BBCは「英情報局保安部(MI5)は13日、中国の工作員とみられる人物が献金を通じてイギリスの議会に食い込み、政治に介入しているとする、異例の警告を発した」と報道。ロンドンの中国大使館は「私たちはいかなる外国議会においても『影響力を買う』必要はないし、その努力をすることもない。イギリス内の中国人コミュニティーに対する中傷と威嚇のたくらみに強く抗議する」とMI5を非難。中国が否定することは目に見えていたが、実際、中国の「魔の手」はどこまで伸びているのか。日・米・欧での「浸透工作」の全体像を初解明した『見えない手』より、英国での「浸透工作」の一部を特別公開!


中国共産党にとって彼女は重要な存在

北京は2005年頃から「華人参政」政策、すなわち「中国人の政治参加」の推進を始めた。これは「百年恥辱」というナラティブ(物語)と、相変わらず続いている反中的な人種差別主義を悪用した、党の統一戦線戦略における新しい戦術で、これ以降から北京に支援された中国系の人々が政党に所属したり、カナダ、アメリカ、ニュージーランド、オーストラリア、イギリスなどの国で立候補するようになった。(中略)

著名な中国系イギリス人の中には、統一戦線組織の役職者やメンバーになり、中国で会見する人もいる。2018年5月、北京の僑務弁公室は、中国系イギリス人に積極的投票を促し、選挙に立候補している多数の中国系イギリス人たちを称賛した。ここで特に注目すべきは、二人の中国系イギリス人である。

一人目は弁護士のクリスティン・リーである。彼女は北京、香港、広州、そしてロンドンにそれぞれ事務所を構えている。2006年、彼女は「イギリス華僑プロジェクト」(the British Chinese Project:中国語では「英国華人参政計画」)を設立した。

当時、彼女は「中国海外交流協会」のメンバーだった。彼女の中国共産党とのつながりは深い。なぜならロンドンの中国大使館の主任法律顧問や、僑務弁公室の法律顧問を務めたこともあり、また中国人民政治協商会議の海外メンバーでもあるからだ。

これらの役職は、彼女が党にとって重要な存在であることを明確に示している。彼女は、イギリス議会の中の「超党派中国グループ」(the Inter-Party China Group)の幹事でもある。

リーのイギリス政治への関与は、トニー・ブレア政権時代に始まったように見える。この頃の彼女は、ロンドンの労働党の下院議員で、労働党の「影の国際貿易相」を近年務め、大臣経験もあるバリー・ガーディナーと懇意(こんい)になっていた。

中国の国有企業による原発建設を強く支持

2017年にこうしたつながりを暴露したハンナ・マクグラスとオリバー・ライトは、ロンドン・タイムズ紙に次のように書いた。「その後に続いたのは……実りある交際で、最終的にはリーはこの下院議員と彼の所属する政党の両方に、20万ポンド以上の寄付をするようになった」というのだ。

ブレア政権で大臣を務めていたバリー・ガーディナーは、2007年、クリスティン・リーの「イギリス華僑プロジェクト」の会長に就任し、二人はウェストミンスターで友人を獲得する活動を始めた。この活動は、ガーディナーが2011年に「中国系イギリス国民の意見を代弁する……超党派グループを結成したことで大きく前進した」のである。

同会の副会長には、リーの子供の一人であるマイケル・ウィルクスが就任している。もう一人の息子であるダニエル・ウィルクスは、母親の法律事務所から給料をもらいつつ、ガーディナーの議会事務所でも働き始めた。

ガーディナー議員は、英中関係の緊密化と、中国の政府系ファンドによるイギリスへの投資を強く支持してきた。彼は中国の国有企業によるヒンクリーポイント原子力発電所の建設を強く支持したが、当時のテリーザ・メイ政権は国家安全保障上の懸念から、建設を延期した。

ロンドン・タイムズ紙によれば「労働党のある筋によれば、彼(ガーディナー)はヒンクリーポイントでの原発計画への中国関与に対する党内からの批判に強く反発していた」という。

関連する投稿


中国共産党「100年の秘密兵器」|石平

中国共産党「100年の秘密兵器」|石平

結党当時、党員数五十数名しかいない弱小政党だった中国共産党はいかにして勢力を拡大し暴力による政権奪取をはたしたのか。我々日本国民全員が、中国共産党という極悪政党の伝統的浸透工作の正体を正しく認識する必要がある。


韓国を揺るがす北京の影響力|クライブ・ハミルトン

韓国を揺るがす北京の影響力|クライブ・ハミルトン

禁断の書として世界各国で出版停止が相次いだ衝撃作。日本でも6万部を突破したベストセラー『目に見えぬ侵略 中国のオーストラリア支配計画』と『見えない手 中国共産党は世界をどう作り変えるか』を徹底的に分かり易く解説した『「目に見えぬ侵略」「見えない手」副読本』(すべて飛鳥新社刊)が、遂に韓国語で11月中旬に発売!ハミルトン教授による韓国語版の序文を掲載する!


『習近平vs.櫻井よしこ』

『習近平vs.櫻井よしこ』

2021年7月1日に結党100年を迎えた中国共産党。中国共産党の暴走は一体いつまで続くのか。親中派は一体いつまで中国の代弁者でいるつもりなのか。「中国共産党の弱みを知り、今こそ、自衛隊の強化と憲法改正に向かって走るべきときだ」。櫻井よしこさんがいま最も伝えたい中国共産党100年の“真実”が1冊に!


背筋が凍りついた中国による『目に見えぬ侵略』|石平

背筋が凍りついた中国による『目に見えぬ侵略』|石平

『目に見えぬ侵略 中国のオーストラリア支配計画』(飛鳥新社刊)を読むのは、私にとっては近年に滅多にない、強烈な読書体験であった。


日本は民主主義の守護者の役割を担え/『見えない手』日本語版前書き

日本は民主主義の守護者の役割を担え/『見えない手』日本語版前書き

6万部突破のベストセラー『目に見えぬ侵略』の第二弾『見えない手 中国共産党は世界をどう作り変えるか』が発売! アメリカ、イギリス、EU各国での中国の影響力工作を実名で暴露、前作以上の衝撃があります。さらに日本についても特別加筆があり、必読の書です。その日本語版前書きを特別公開! 「言論の自由と報道の自由は中国共産党にとって最大の敵であり、我々はこれを最優先事項として守らなければならない」(本文より)


最新の投稿


【今週のサンモニ】反原発メディアが権力の暴走を後押しする|藤原かずえ

【今週のサンモニ】反原発メディアが権力の暴走を後押しする|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


【読書亡羊】「時代の割を食った世代」の実像とは  近藤絢子『就職氷河期世代』(中公新書)

【読書亡羊】「時代の割を食った世代」の実像とは  近藤絢子『就職氷河期世代』(中公新書)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


【今週のサンモニ】臆面もなく反トランプ報道を展開|藤原かずえ

【今週のサンモニ】臆面もなく反トランプ報道を展開|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


トランプ再登板、政府与党がやるべきこと|和田政宗

トランプ再登板、政府与党がやるべきこと|和田政宗

米国大統領選はトランプ氏が圧勝した。米国民は実行力があるのはトランプ氏だと軍配を上げたのである。では、トランプ氏の当選で、我が国はどのような影響を受け、どのような対応を取るべきなのか。


【今週のサンモニ】『サンモニ』は最も化石賞に相応しい|藤原かずえ

【今週のサンモニ】『サンモニ』は最も化石賞に相応しい|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。