文化的統制と政治的統制
図-2 主権国家のイデオロギー(3軸)
ここまでは、政治的統制と経済的統制という2つの軸に沿ってイデオロギーを整理してきましたが、ここでは【人格権 personality rights】という国家に対する国民の権利に基づく【文化的統制 cultural control】という3つ目の軸について整理したいと思います。
文化的統制の軸は、精神的・身体的な観点で人格権をめぐり、文化的な偏見から人格を保護するために法の介入を求める文化的自由権と、文化的な伝統・秩序・認識に基づき法の介入を求める文化的社会権を対立させたものです。この2つのイデオロギーは、それぞれ【革新主義(進歩主義) progressivism】と【伝統主義 traditionalism】に対応します(図-2)。
人格権には、プライバシー権・肖像権、身体・性・健康に関する人格権などがあり、特に近年では、LGBT・夫婦別姓等の性別にかかわる人格権が文化的な対立を生んでいます。
また、人格権とは異なるものの、女系天皇・女性天皇に関する問題も文化的な対立と言えます。
ここで重要なのは、文化的統制を政治的統制と混同しないことです。国民の自由権と社会権に関係する政治的統制は国家と国民の問題であるのに対して、国民の人格権に関係する文化的統制は国民と国民の問題であり、国家は調整役に過ぎません。
間違いやすい【独裁主義】
政治的イデオロギーと非常に混同されやすいのが、国家の【政治体制 political system】です。政治体制はイデオロギーとは本質的には無関係であり、【被治者 the ruled】である国民を統治する【治者 the ruler】が誰であるかによって決まります。
すなわち、治者が被治者と同じ国民である【民主主義 democracy】、治者が特定の私人である【専制主義 autocracy】、治者が国王/首長である【絶対君主主義 absolute monar-chy】などがあります。
さらに間違いやすいのですが、【独裁主義 despotism】は民主主義の一形態であり、国民によって合法的に選ばれた代表が強大な権力を持つ政治体制です。
この独裁主義の代表と全体主義の代表と専制主義の治者は、被治者である国民の自由権と社会権を容易に奪い、私的な目的で国民を支配することが可能となります。このように、被治者の自由権を強く制限した政治体制を【権威主義 authoritarianism】と言います。
以上、政治イデオロギーと政治体制について明確にまとめてきましたが、以降は日本の主要政党について分析していきたいと思います。