【偽善者列伝】目標を失い漂流する朝日新聞|加地伸行

【偽善者列伝】目標を失い漂流する朝日新聞|加地伸行

平成26(2014)年9月11日、吉田調書の報道等に朝日新聞社長が形ばかりの謝罪をした。詳細はすでに報道されている。 その翌日、さまざまなコメントが出ていたが、最も印象的だったのは、石破茂地方創生担当相がBS放送で語ったという皮肉である。


平成26(2014)年9月11日、吉田調書の報道等に朝日新聞社長が形ばかりの謝罪をした。詳細はすでに報道されている。

その翌日、さまざまなコメントが出ていたが、最も印象的だったのは、石破茂地方創生担当相がBS放送で語ったという皮肉である。同日付産経新聞に依れば、朝日の記者は「どれほどの国語能力を持っていたのか。〔吉田調書等は〕どう見ても読み誤まりようがない。〔私は〕朝日の入社試験を受けたことがないから知らないが、相当の国語力がないと採用されないのではないか」と。

記事の見出しは「朝日記者の国語能力疑問」――その朝日新聞が「語彙・読解力検定」なる国語試験を営業しているのであるから、これはもうブラックジョーク。ならば、次回に次のような出題にしてはどうか。

次の項目から、最も罪深いものを1つ選びなさい。1.従軍慰安婦 2.従軍看護婦 3.従軍漫才師 4.従軍記者。

正解はもちろん4である。かつて当時の毎日新聞の従軍記者は、2人の日本軍将校の中国での100人斬り競争という、ありえない記事を書いた。そのため、敗戦後、2人は裁判とは言えない裁判ですぐ死刑となった。

そうした記事の責任など、どこ吹く風、戦後、この記者は中国の保護を受けて暮らしたという。

「朝日の体質は変わらない」と断言

さて謝罪後の朝日新聞、今後その体質は変わるのか。断言しておこう〈変わらない〉と。

なぜか。そのわけを言おう。話は約60年前、私の大学生時代に遡る。当時、日本を社会主義(あわよくば共産主義)国家にしようという大きな思想的潮流があった。それもやや現実味を帯びて。

大学では、学問や研究をするのはそのためと思い込んでいた教師や学生が多かった。社会にもまた同様の集団が多く存在し活動していた。

当然、社会主義や共産主義の支持者が多かった新聞社は保守政権批判を第一とした。

新聞の言論は、公平性が第一などと言っている人がいるが、カマトトもいいところ。まずはすでに一定の思想的立場があり、日本は、彼らの祖国〈ソ連〉(当時)の植民地になることを目的としていた。すべてはソ連の旗の下に。

ところが、そのソ連が崩壊したため、目標を失ってしまった。だが、長年かけてできた保守政権批判等の体質は、そう簡単に変えられるものではない。相変わらず保守政権批判という不遜な安住をし、今日に至っている。

とにかく、保守政権の悪口を言っておれば〈高度の批判〉風に見せかけることができ、一丁上がり。日本を社会主義国家へという目標を失い、漂流しているのが朝日の現状である。そのため捏造だってなんだって平気という荒廃となった。そういう社風の体質は変えようがない。

中国は古代、鐘を盗んだ男が逃げていたが、大きくて重い。そこで砕いてまとめようとして鐘を割ったところ、大音響(大噓の報道)。それを他人が聞いて鐘を奪いに来るかもと心配して古人曰く、〔自分の〕耳を掩へり、と。

【古典の智恵】

范氏の亡びし〔とき〕や、百姓の鍾(かね)を得し者有り。 〔背〕負いて走らんと欲すれば、則ち鍾 大にして負うべからず。椎(鉄鎚)を以て之を毀てば(壊せば)、鍾 況然として音〔大きな鐘の音〕有り。人の之を聞きて己より奪わんことを恐れ、遽に其の耳を掩へり。

『呂氏春秋』自知

関連する投稿


進化する自衛隊隊舎 千僧駐屯地に行ってみた!|小笠原理恵

進化する自衛隊隊舎 千僧駐屯地に行ってみた!|小笠原理恵

かつての自衛隊員の隊舎といえば、和式トイレに扇風機、プライバシーに配慮がない部屋配置といった「昭和スタイル」の名残が色濃く残っていた。だが今、そのイメージは大きく変わろうとしている。兵庫県伊丹市にある千僧駐屯地(せんぞちゅうとんち)を取材した。


変わりつつある自衛官の処遇改善 千僧駐屯地に行ってみた!|小笠原理恵

変わりつつある自衛官の処遇改善 千僧駐屯地に行ってみた!|小笠原理恵

自衛隊員の職務の性質上、身体的・精神的なストレスは非常に大きい。こうしたなかで、しっかりと休息できる環境が整っていなければ、有事や災害時に本来の力を発揮することは難しい。今回は変わりつつある現場を取材した。


終戦80年に思うこと「私は『南京事件』との呼称も使わない」|和田政宗

終戦80年に思うこと「私は『南京事件』との呼称も使わない」|和田政宗

戦後80年にあたり、自虐史観に基づいた“日本は加害者である”との番組や報道が各メディアでは繰り広げられている。東京裁判や“南京大虐殺”肯定派は、おびただしい数の南京市民が日本軍に虐殺されたと言う。しかし、南京戦において日本軍は意図的に住民を殺害したとの記述は公文書に存在しない――。


旧安倍派の元議員が語る、イランがホルムズ海峡を封鎖できない理由|小笠原理恵

旧安倍派の元議員が語る、イランがホルムズ海峡を封鎖できない理由|小笠原理恵

イランとイスラエルは停戦合意をしたが、ホルムズ海峡封鎖という「最悪のシナリオ」は今後も残り続けるのだろうか。元衆議院議員の長尾たかし氏は次のような見解を示している。「イランはホルムズ海峡の封鎖ができない」。なぜなのか。


「ある意味、地獄が待ってます」退職自衛官を苦しめる若年給付金の返納ルール|小笠原理恵

「ある意味、地獄が待ってます」退職自衛官を苦しめる若年給付金の返納ルール|小笠原理恵

ある駐屯地で合言葉のように使われている言葉があるという。「また小笠原理恵に書かれるぞ!」。「書くな!」と恫喝されても、「自衛隊の悪口を言っている」などと誹謗中傷されても、私は、自衛隊の処遇改善を訴え続ける!


最新の投稿


【今週のサンモニ】「サナエガー」番組にしてはお手柔らか?|藤原かずえ

【今週のサンモニ】「サナエガー」番組にしてはお手柔らか?|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


【読書亡羊】韓国社会「連帯」と「分断」の背景に横たわる徴兵制の現実とは  金柄徹『韓国の若者と徴兵制』(慶應義塾大学出版会)|梶原麻衣子

【読書亡羊】韓国社会「連帯」と「分断」の背景に横たわる徴兵制の現実とは 金柄徹『韓国の若者と徴兵制』(慶應義塾大学出版会)|梶原麻衣子

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


【徹底検証!】フェイクだらけの「石破辞めるな」報道|楊井人文【2025年11月号】

【徹底検証!】フェイクだらけの「石破辞めるな」報道|楊井人文【2025年11月号】

月刊Hanada2025年11月号に掲載の『【徹底検証!】フェイクだらけの「石破辞めるな」報道|楊井人文【2025年11月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


救急隊員が語ったラブホテルのやばすぎる怪現象|なべやかん

救急隊員が語ったラブホテルのやばすぎる怪現象|なべやかん

大人気連載「なべやかん遺産」がシン・シリーズ突入! 芸能界屈指のコレクターであり、都市伝説、オカルト、スピリチュアルな話題が大好きな芸人・なべやかんが蒐集した選りすぐりの「怪」な話を紹介!信じるか信じないかは、あなた次第!


日本心臓病学会創設理事長が告発 戦慄の東大病院⑥無気力な東大医学生たち|坂本二哉【2025年11月号】

日本心臓病学会創設理事長が告発 戦慄の東大病院⑥無気力な東大医学生たち|坂本二哉【2025年11月号】

月刊Hanada2025年11月号に掲載の『日本心臓病学会創設理事長が告発 戦慄の東大病院⑥無気力な東大医学生たち|坂本二哉【2025年11月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。