「強大になるほど、戦略的に弱くなる」大国・中国
この夏の課題図書がいよいよ発売。
本誌でもおなじみ、エドワード・ルトワックによる『ラストエンペラー習近平』(文春新書、奥山真司訳)。大国になったことそれ自体は間違いない中国だが、「それゆえに弱点を抱えることになった」とするルトワックの論理は鮮やかで刺激的、あっという間に読み終わってしまう。
中国が「強い大国」となり、自国の力を過信したことで、欧州の各国までを「対中包囲網」に参戦させてしまった現在。
私の考えでは、習近平は「強大になるほど、戦略的に弱くなる」という戦略の逆説(ストラテジック・パラドックス)にはまってしまったのである。
そうルトワックが言う通り、自国の強大さを国際社会にアピールすればするほど、仲間が減っていく中国。「戦狼外交」と呼ばれる強気の広報官は悪目立ちし、一方で習近平がどんなに「世界人類運命共同体」などとアナウンスしても、真の意味での仲間が増えることはない。
国際社会にくすぶる「反米意識」を巧みに利用して「陣営的には同じ側」の国を増やそうとしているが、実際には中国のカネを当てにしているだけで、誰も中国を心から信じてはいないのだ。
前著『チャイナ4.0』(文春新書)で指摘していた中国の問題点と将来予測が、ことごとく当たっていることにも驚かされる。
もちろん中国を警戒する必要はあるが、やみくもに恐れ批判するのではなく、中国のウィークポイントを突く「中国・習近平『つまずき』戦略」を取るべしとする指南は、説得力十分だ