フェーズ3においては、治験にどれだけの人数を集められるかが勝負となる。数が少ないと、ワクチンによる感染予防効果が、単なる偶然によるものか、それともワクチンの真の力なのかを判定する統計学的な検定で結果が出ない可能性が高くなるからである。
海外製薬会社のフェーズ3参加人数をみると、米ファイザー社が約43000人、米モデルナ社が約30000人、英アストラゼネカ社が23000人といずれも万単位の規模である。
一方、日本ではこれまでこれだけの大人数を集めた治験を行った経験が全くない。現在の日本の政府、製薬会社、大学では、これだけの人数を集めてフェーズ3を行う能力は持ち合わせていないのではないだろうか。フェーズ3が行えないということは、いつまで経っても国産ワクチンを開発できないということを意味する。これは極めて由々しき事態である。
ワクチン開発、いま日本がすべきこと
現在、新型コロナウイルスワクチンの世界的な不足状況が指摘されており、イタリアではファイザーとアストロゼネカの新型コロナウイルスワクチンの供給が十分に行われないとして法的措置をとるなど、ワクチン獲得は、いわば世界的な安全保障問題となっている。
そこで、いまからでも日本にできることを具体的に提案したい。それは、できる限りの検証を行うことである。65歳未満の人にワクチン接種が始まるのは、おそらく何カ月か後になると考えられる。春から夏にかけて、数万人規模の希望者を募り、在宅で毎週PCR検査あるいは抗原検査を行ってもらい、結果をフィードバックできるようにする。
さらにそのなかから抽選で半数の人を選び、ワクチンを先行接種してもらう。こうすることにより、ワクチンを接種した群と接種しない群での感染予防割合を比較したり、副反応(特に重篤な健康被害)の起こる割合の違いなど、いろいろなことが検証できる。もちろん、思うようにうまくいかなかったり、感染率が低いために統計的な差が出ない可能性もあるが、やってみないとわからないことも多くある。
簡単ではないと思うが、PCR検査などを行う民間企業は増えてきており、ワクチンを接種する施設も増えてくると予想されるため、やれないことはないのではないか。