ワクチンは国防である
いま新型コロナウイルスに対するワクチンは、短期的な有効性は確認されている。しかし、以下の問いに対する答えは、実際にワクチン接種を行いながらデータを蓄積していく以外はない。
・どれくらい効果が続くか(半年ぐらいだと冬前にまた打つ必要があるかも)
・人にうつすのを防ぐのか(まだよくわからないと言われている)
・一回だけでも効果はあるのか(二回の場合の半分ぐらい?)
・誰に接種すべきか(特に効果が短期間だとすると、中高年に限定して半年ごとのほうがいい?)
正しいデータ分析は、実情を知るうえで重要である。実際どうなっているかを知らないと、対策が立てられない。新型コロナウイルスに対してはわかってきたこともあるが、わかっていないことも多くある。それゆえ、継続したデータ解析を行うことは、政策決定を臨機応変に行ううえで極めて重要である。
繰り返すが、ワクチン接種もワクチン開発も国防である。いつまでも羅針盤のない、砂漠を漂う状況では国を守れないし、国民が不幸になってしまうことを政府は肝に銘じてほしい。(初出:月刊『Hanada』2021年5月号)
1965年生まれ。筑波大学医学群卒業。米国ジョンズ・ホプキンス大学公衆衛生大学院疫学部修士課程修了(MPH﹇公衆衛生学修士号﹈)。ジョンズ・ホプキンス大学デルタオメガスカラーシップを受賞。米国CDC(疾病予防管理センター)他施設研究プロジェクトコーディネイター、財団法人結核予防会に勤務後、厚生労働省入省。厚生労働省医系技官を経て、現職。著書に『厚労省と新型インフルエンザ』(講談社現代新書)、『厚生労働省崩壊』(講談社)、『厚労省が国民を危険にさらす』(ダイヤモンド社)、『辞めたいと思っているあなたへ』(PHP研究所)など。最新刊『新型コロナ、本当のところどれだけ問題なのか』(飛鳥新社)が発売たちまち3刷。