著者インタビュー|残間里江子

著者インタビュー|残間里江子

「人生100年時代」といわれています。まえがきには〈会社をリタイアしても、人生は終わっていない。本書は人生に最後の花を咲かせたいと思っている全ての大人たちに捧げる応援の書である〉とありますね。団塊(だんかい)の世代の一員である残間さんが、同世代の人たちとの交流や仕事を通して感じたことや、日常のこと、家族について考えたことなどを綴っていらっしゃいます。


――シニア世代に向かって、もっと本音を話そうと呼びかけるエピソードも印象的でした。 


残間 50代はまだシニアという認識はないでしょうから、60代以上のひとね。


特に、われわれ団塊の世代がカッコつけてるんだよね。どういえば自分がどう見えるかを熟知してるから、自分の本音よりも、カッコよく思ってもらえるようなことをいいたがるの。「どう思われようがわたしはわたし」みたいなのって、団塊の世代ってなかなかないんですよ。周囲をいつも気にしてたから。


たとえば、本音では年をとったら子どもと同居したいと思っているのに、ずっと「あんたの世話にだけはならないからね」といい続けてきてたために、それを口に出せなくなっているとか。本当は赤い服が着たいのに、年甲斐もないといわれるのが嫌だから地味なものを選ぶとか。逆に年寄りくさいと思われたくないから、無理をすることもあるし。


聞いているひとは、そうなのかと思ってしまうでしょう。でも本音と世の中とがミスマッチになると、シニアが本当に欲しいものが手に入らなくなりますよ。


――若い世代のひとたちには、この本をどう読んで欲しいですか。


残間 若いひとたちには難しいかもね。ただ親の世代のことを理解するためにはいいかも。


今の30~40代は、まだ親のことを理解しかねているのよ。さっきいったように、本音と建前が違っていて、ええカッコしいで、ウソではないんだけど本当ではないことをいい続けてきてるから。


「好きなことやっていいわよ、お母さんもあんたたちには迷惑かけないから」というけど、本音は「迷惑かけてもいっしょに暮らしたい」っていうのを飲み込んじゃってる。本当のことをいわないから、子どもたちも戸惑ってるわけよね。


うちの会社の若いひとにこの本を渡したら、


「母に読ませたら、本当に面白いっていってました。ぼくも、ああそうだったのかと思うところがいっぱいありました」


といってた。だって若いひとは親のいってることがわかんないっていうんだもん、何が本当なんだか。だから「全部本当で全部ウソだよ」っていってるんだけどね。

もう一度修業をしよう!

――シニアの人口は多いですから、社会とのつながりが、ますます大事になりますね。


残間 同世代のひとたちにはまだまだがんばってほしいわ。10年くらい前までは、自分のなかにもいまとは違う野心があって、同世代で光が当たっているひとを見ると、やっぱり羨望と嫉妬で「友がみなわれよりえらく見ゆる日よ」みたいな心境だったけど(笑)、近ごろでは心の底から「がんばって」って思うもの。それはだんだん、同世代が視野のなかからいなくなってきてるということでもあるんだけど。


わたし自身は、文章を書くことに改めて向き合っていこうとか、いまもいろいろ考えています。もう一度修業をしよう、とか。自分は何がやりたいのか、やり残したことはあるのか。自分にまだ何か可能性のようなものがあるのか、ないのか。


家のなかでグズグズしてたってしょうがないものね。新しい一歩を踏み出さなくちゃ。

著者略歴

残間里江子

https://hanada-plus.jp/articles/207

1950年仙台市生まれ。アナウンサー、雑誌記者、編集者を経て、1980年、株式会社キャンディッド・コミュニケーションズを設立。雑誌「Free」(平凡社刊)編集長、山口百恵著「蒼い時」の出版プロデュース、自主企画事業、映像、文化イベント等を多数企画・開催。

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