95歳の世界的指導者
1925年生まれ。“95歳、マレーシア政界の戦士”マハティール前首相は、政敵・ムヒディン首相打倒に闘志を燃やす。しかし、勇ましい行動や辛辣な言動とは裏腹に、素顔は物静かで物腰も柔らか。どちらかというと、不器用で恥ずかしがり屋の一面も。口癖は、「work,work,work!」、生き甲斐も「仕事」。束の間の仕事の合間には、読書やドライブ、乗馬で気分転換する。尊敬する人は、パナソニック創業者の松下幸之助とソニー創業者の盛田昭夫。好きな食べ物は、果物の王様、ドリアンと日本の肉うどん(クアラルンプール、マハティール氏の執務室。筆者・末永恵撮影)
日本で報道されていない“マハティール首相電撃辞任の真相”の裏側と今後のマレーシア政局の行方を解説する。
マレーシアでは、小さな子供まで、95歳のマハティールのことをよく知っている。日本人が必ず観光で訪問する、かつては世界一の超高層ビルといわれた「ペトロナス・ツインタワー」や日本の霞が関に匹敵する官庁街の新都心区「プトラジャヤ」など、全てマハティールが構想し、完成の指揮をとった。
そんなマハティールをマレーシアの国民や地元メディアは「Tun」(トゥン)と呼ぶ。政治家になる以前は医師だったことから、 正式には「トゥン・ドクター・マハティール・モハマド」だが、親しみも込め、そう呼ぶ。筆者もこれまで、単独インタビューや記者会見で、そう呼ばせてもらってきた。
トゥンとは、国王から授与される最高位の称号で、マハティールは最高位の勲章も下賜されたマレーシアの多大なる貢献者なのだ。2020年2月に第7代首相を電撃辞任したが、前任時代、マレーシアの第4代首相を22年間(1981年から2003年)務めた。国内の反対を押し切って、欧米に追随するアジアの諸外国をよそに、日本の成長モデルをお手本とした「ルック・イースト(東方政策)」を打ち出し、欧米依存型ではない独自の信念と価観に基づく同政策を推し進め、マレーシアを東南アジアでシンガポールに次ぐ工業国に成長させた。
首都クアラルンプールを代表する観光名所でもあるペトロナス・ツインタワー。往年のハリウッドスター、ショーン・コネリーと有名俳優のキャサリン・ゼタ=ジョーンズが主演した米ハリウッド映画「エントラップメント(罠)」(米公開1999年)の撮影舞台にもなった同ビルは、日本の建設会社ハザマがタワー1を建設した(筆者・末永恵撮影)