それはともかく、米側の基本的姿勢はいまのところトランプ前政権の対中政策の延長で、さらに同盟関係の強化を対中圧力に利用していることは明らかだ。中国は米国に外交上の先手を打たれた形だが、米中交渉を続行させる気持ちは隠せない。
楊氏は、米中両国が過去に上げた業績からも「対立ではなく、コミュニケーションを強め、相違をうまく処理し、協力を拡大する必要がある」と明言した。王氏も冒頭発言の最後に、米国が望めば中国は相互尊重を基礎にして理解を深めたいと述べている。中国紙環球時報も、衰退しつつある米国は弱みを見せまいと、逆に高姿勢を示しているので、米中間でサイバー問題などを解決するルールをつくってはどうかと提案している。
両国がぶつかり合いを演じていないのは気候変動問題だ。バイデン政権は予想される中国の巧妙な外交をどう処理するか。交渉の第二段階がいずれ始まるだろう。(2021.03.22 国家基本問題研究所「今週の直言」)
国家基本問題研究所副理事長。1933年千葉県生まれ。早稲田大学法学部卒業後、時事通信社に入社。ハンブルグ特派員、那覇支局長、ワシントン支局長、外信部長などを務める。1992年から杏林大学で教鞭を執る。法学博士。杏林大学名誉教授。専門は国際政治。国家基本問題研究所副理事長。美しい日本の憲法をつくる国民の会共同代表。著書に『戦略家ニクソン』『激流世界を生きて』『憲法改正、最後のチャンスを逃すな!』など多数。