あなたたちは北京五輪をボイコットしますか|花田紀凱

あなたたちは北京五輪をボイコットしますか|花田紀凱

《沈黙は賛同であると言われ、強く反省しています。私はいかなる性差別にも反対します》と世界陸上銅メダルの為末大。ならば、問う。「森発言」のどこが「女性差別」にあたるのか。《沈黙は賛同》であるならば、中国が行うウイグルでの「ジェノサイド」にこそ声を上げるべきだ。


「女性差別」でも「女性蔑視」でもない

Getty logo

森前会長の「女性は会議が長い」という発言、「女性差別」でもなければ、「女性蔑視」でもありゃしない。まず、朝日、毎日などが、そう書いて、ニューヨークタイムズなど外国メディアに流す。アジア、ことに日本では女性が虐げられているというのは、欧米のメディアが大好きな話題だから、わっと飛びつく。
 
NYタイムズ、「森氏の年齢と時代遅れの態度が本当の問題」、英紙、『フィナンシャル・タイムズ』では「東京五輪のトップが国家的恥をさらした」などなど。すかさず、「外国でも問題に」と批判を逆流させて騒ぎ立てる――。従軍慰安婦などと全く同じ構図だ。
 
そして、利用されるのが、今回はスポーツ選手。
世界陸上銅メダルの為末大(敬称略、以下同)。
「沈黙していることは賛同と同じと見られる。東京大会が開かれたら、あなたはその時に何を言ったのか聞かれる。私はいかなる性差別にも反対します」
性差別に賛成する人間はいないだろう。問題は森発言が「性差別」かどうかだ。
 
リオ五輪400メートル個人メドレー金メダルの競泳の萩野公介。
「がっかりした。そういう発言をする思考回路に行きつくのが信じられない」
 
競泳、ロンドン五輪銀メダリストの鈴木聡美。
「自分にも大きく影響が出ると思うので多くは語れないが、怒りも正直あった」
 
テニスの大坂なおみ。
「少し無知。立場のある人は発言する前に少し考えてみれば」
大坂なおみに、「無知」と言われちゃ、森前会長、立つ瀬があるまい。

ウイグルでの「ジェノサイド」には沈黙か

森前会長に最も厳しかったのはアイスホッケーで4回連続金メダルのカナダ代表だったヘイリー・ウィッケンハイザーIOC委員。
「五輪開催で東京に行ったら、朝食会場のビュッフェでこの男性を絶対に追い詰める。東京で会いましょう」
 
海千山千のIOC委員たちと、時には水面下で交渉を行い、招致が決まったら決まったでスポンサーに頭を下げ……。病気を抱え、週3回の透析をしながら、森前会長がどれほどの苦労をしてきたか。余人をもって替え難しというが、森前会長でなければ東京五輪は実現できなかったろう(コロナでまだ開催できるかどうか未定だが)。
 
一昨年、日本中を熱狂させた、ラグビーのワールドカップ。あれだって森前会長でなければ不可能だったろう。選手たちがオリンピックという最高の場で、自らの力を発揮できるのも長年にわたる森前会長の努力あってこそではないか。
 
そんな森前会長に対して感謝のひとつもなぜ言えないのか。
 
いずれも、取材する記者の側から「女性差別」「女性蔑視」とすり込まれた上での発言だから、ま、しかたない面もあろうが、マラソンで、シドニー、金メダルの高橋尚子、五輪4連覇のレスリング吉田沙保里など「発言を控え」た選手も少なくない。
 
最後に為末大をはじめとする森前会長を批判したアスリートに問いたい。
「あなたたちは北京五輪をボイコットしますか」、と。

「女性差別」「女性蔑視」どころじゃない。
中国は日々、ウイグルで女性虐待、女性暴行を繰り返している。モンゴルでも、チベットでも。
「そんな北京五輪に参加するんですか」と問いたい。
ウィッケンハイザーIOC委員、「あなたは北京のビュッフェで、習近平を追い詰めますか」。

関連する投稿


人権弾圧国家・中国との「100年間の独立闘争」

人権弾圧国家・中国との「100年間の独立闘争」

人権弾圧国家・中国と対峙し独立を勝ち取った南モンゴル。100年におよぶ死闘から日本人が得るべき教訓とは何か。そして今年10月、日本で内モンゴル人民党100周年記念集会が開催される。


【天下の暴論】政治家として、人間として全く成長していない石破総理|花田紀凱

【天下の暴論】政治家として、人間として全く成長していない石破総理|花田紀凱

28年間、夕刊フジで連載され、惜しまれつつ終了した「天下の暴論」が、Hanadaプラスで更にパワーアップして復活!


【天下の暴論】石破総理、とっとと退陣してくれ!|花田紀凱

【天下の暴論】石破総理、とっとと退陣してくれ!|花田紀凱

28年間、夕刊フジで連載され、惜しまれつつ終了した「天下の暴論」が、Hanadaプラスで更にパワーアップして復活!


旧安倍派の元議員が語る、イランがホルムズ海峡を封鎖できない理由|小笠原理恵

旧安倍派の元議員が語る、イランがホルムズ海峡を封鎖できない理由|小笠原理恵

イランとイスラエルは停戦合意をしたが、ホルムズ海峡封鎖という「最悪のシナリオ」は今後も残り続けるのだろうか。元衆議院議員の長尾たかし氏は次のような見解を示している。「イランはホルムズ海峡の封鎖ができない」。なぜなのか。


【天下の暴論】花見はやっぱり難しい|花田紀凱

【天下の暴論】花見はやっぱり難しい|花田紀凱

28年間、夕刊フジで連載され、惜しまれつつ終了した「天下の暴論」が、Hanadaプラスで更にパワーアップして復活!


最新の投稿


人権弾圧国家・中国との「100年間の独立闘争」

人権弾圧国家・中国との「100年間の独立闘争」

人権弾圧国家・中国と対峙し独立を勝ち取った南モンゴル。100年におよぶ死闘から日本人が得るべき教訓とは何か。そして今年10月、日本で内モンゴル人民党100周年記念集会が開催される。


異形の権力、石破政権の最期|青山繁晴【2025年10月号】

異形の権力、石破政権の最期|青山繁晴【2025年10月号】

月刊Hanada2025年10月号に掲載の『異形の権力、石破政権の最期|青山繁晴【2025年10月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


「住む場所も収入も失った。自殺するしかない」 成年後見制度の報じられない地獄|長谷川学

「住む場所も収入も失った。自殺するしかない」 成年後見制度の報じられない地獄|長谷川学

成年後見制度の実態が国民にほとんど知らされていないのはなぜなのか? 制度を利用したばかりに民主主義国家にあるまじき凄まじい人権侵害を受け、苦しんでいる人が大勢いる。法制審議会は成年後見制度の見直しに向けた議論を行っており、今年6月10日に見直しに関する中間試案を公表したが――。


【常識保守のすすめ】〝安倍依存症〟から脱却するために|片山さつき×小川榮太郎【2025年10月号】

【常識保守のすすめ】〝安倍依存症〟から脱却するために|片山さつき×小川榮太郎【2025年10月号】

月刊Hanada2025年10月号に掲載の『【常識保守のすすめ】〝安倍依存症〟から脱却するために|片山さつき×小川榮太郎【2025年10月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


【今週のサンモニ】「再エネありき」「反原発ありき」の時代は終わった|藤原かずえ

【今週のサンモニ】「再エネありき」「反原発ありき」の時代は終わった|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。