ナショナリズムの強いミャンマーの軍部は、中国に不信感を持っている。中国がミャンマーの政府と軍部に影響力を及ぼすため、反乱勢力を支援してきたと信じているためだ。実のところ、ミャンマー軍首脳はスー・チー氏が習近平国家主席と過度に親密になってきたことを懸念していた。
軍首脳はミャンマーの中国依存を減らし、民主主義諸国との経済・政治関係を再建することで、外交のバランスを取ろうとして、民主化プロセスに踏み切った。今、軍首脳が最も望まないのは、ミャンマーが中国の傘下に再び組み込まれることだ。
こうした背景の下、米国はミャンマーに対し、制裁より動機付けに重きを置く慎重かつ現実的な対応を探るのがよい。米国は同盟・友好国とりわけ日本とインドの意見を聞かなければならない。日印両国はミャンマーに大きな経済投資を行い、軍部と協力的な関係を築いている。両国は、戦略的要衝のミャンマーで中国の影響力を相殺する政策を模索してきたのである。(国家基本問題研究所「今週の直言」より転載)
インド政策研究センター教授。専門は戦略研究。著書にAsian Juggernaut: The Rise of China, India and Japan (Harper Collins, 2006)、Water: Asia’s New Battleground (Georgetown University Press, 2011) など。