中国人民解放軍が進める「外国要人データベース化」|山崎文明

中国人民解放軍が進める「外国要人データベース化」|山崎文明

中国国有系企業が世界の財界関係者、軍関係者を含む240万人分の個人データを集めていたことを各国メディアが一斉に報じた。創設者はデータを中国政府の諜報機関や人民解放軍へ提供していると公言。住所、電話番号から、交友関係、銀行取引記録、診療カルテ情報に至るまで。その中には日本人も500名以上が記録されていた!


交友関係、診療カルテ情報まで……日本人も500名以上が記録

9月14日、英国のデイリー・テレグラフ、インドのインディアン・エクスプレス、オーストラリア放送(ABC)が中国、深センに拠点をおく中国国有系企業「振華数拠信息技術有限公司」(英語名Shenzhen Zhenhua Data Information Technology Co. Limited。以下、振華データ)が世界の財界関係者、軍関係者を含む240万人分の個人データを集めていたことを一斉に報じている。深センで教鞭をとったことのある米国人経済学者クリス・バルディング教授が、深センに拠点をおく会社から研究者のネットワークを通じて取得した情報とされており、情報源については明らかにされていない。報道直後に筆者がサイトにアクセスを試みたがサイトはすでに閉鎖され確認できなかった。

報道によると振華データは、2017年に元IBM従業員の王雪峰によって設立されており、オフィシャルサイトでは様々なデータを集め、「ハイブリッド戦争」と「心理戦争」を公式にサポートすることを目的に中国政府の諜報機関や人民解放軍へ提供していると公言している。

より詳細に報じているのはインドのインディアン・エクスプレス紙で、ビックデータ解析ツール会社シャドウマップ(SHADOWMAP)の協力を得て、2ヶ月間にわたり振華データのメタデータを解析している。シャドウマップは2006年にセキュリティ・ブリゲード(Security Brigade)というインドのムンバイに設立された会社の一部門で、セキュリティインテリジェンスを専門としている。調査結果として「海外核心情報データベース(OKIDB: Overseas Key Information Database)」というデータベースの存在を突き止め、ログファイルから大量のエンティティ(データベースを構成するデータ)の抽出に成功している。

OKIDBは人物データベース、機構データベース、コンサルティングデータベース、関連データベースで構成されており、中でも注目されるのは人物データベースで政財界、軍関係者を含む240万人が格納されていたとしている。住所、電話番号、生年月日、職業履歴、家族構成、交友関係、銀行口座、銀行取引記録、診療カルテ情報などが含まれ、日本人も500名以上が記録されているという。

8割は公開情報、2割は諜報活動で収集

OKIDBには、あらゆるレベルの影響力を持っているか、そのような人物と関係している人物に関する情報が含まれている。その影響力の評価は、ソーシャルメディア、ニュース、公開写真での顔認識などに基づいて決定される。システムは、インターネット情報収集システム、ビッグデータクリーニングシステム、外国軍インターネット・インテリジェンスシステム、キーグループ監視分析システムの4つのモジュールで構成されている。外国軍インターネット・インテリジェンスシステムは、商用および軍用の両方の海軍艦艇のほぼリアルタイムの動きを追跡でき、さらに各船に乗船している乗組員のソーシャルメディア情報、個人および公式のソーシャルメディアアカウントの写真とビデオ映像、ニュース記事、武器装備状況、過去の位置データなど幅広い情報を関連付けることができるようになっている。

情報源としては、Twitter、LinkedIn、Facebook、TikTok、VK、Instagramなどの標準的なソーシャルメディアを監視するプラットフォームと、さまざまな地方局のネット配信、ニュースWebサイト、Redditなどのニュースアグリゲーター、ダークウェブサイトが用いられている。8割の情報は公開されている情報すなわちオープンソースから得ているとみられているが、2割の情報は諜報活動で集められているとみられている。

アメリカ軍の秘密基地暴露事件

関連する投稿


習近平「チベット抹殺政策」と失望!岸田総理|石井陽子

習近平「チベット抹殺政策」と失望!岸田総理|石井陽子

すぐ隣の国でこれほどの非道が今もなお行なわれているのに、なぜ日本のメディアは全く報じず、政府・外務省も沈黙を貫くのか。公約を簡単に反故にした岸田総理に問う!


中国、頼清徳新総統に早くも圧力! 中国が描く台湾侵略シナリオ|和田政宗

中国、頼清徳新総統に早くも圧力! 中国が描く台湾侵略シナリオ|和田政宗

頼清徳新総統の演説は極めて温和で理知的な内容であったが、5月23日、中国による台湾周辺海域全域での軍事演習開始により、事態は一気に緊迫し始めた――。


全米「反イスラエルデモ」の真実―トランプ、動く! 【ほぼトラ通信3】|石井陽子

全米「反イスラエルデモ」の真実―トランプ、動く! 【ほぼトラ通信3】|石井陽子

全米に広がる「反イスラエルデモ」は周到に準備されていた――資金源となった中国在住の実業家やBLM運動との繋がりなど、メディア報道が真実を伝えない中、次期米大統領最有力者のあの男が動いた!


【読書亡羊】出会い系アプリの利用データが中国の諜報活動を有利にする理由とは  『トラフィッキング・データ――デジタル主権をめぐる米中の攻防』(日本経済新聞出版)

【読書亡羊】出会い系アプリの利用データが中国の諜報活動を有利にする理由とは 『トラフィッキング・データ――デジタル主権をめぐる米中の攻防』(日本経済新聞出版)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


「もしトラ」ではなく「トランプ大統領復帰」に備えよ!|和田政宗

「もしトラ」ではなく「トランプ大統領復帰」に備えよ!|和田政宗

トランプ前大統領の〝盟友〟、安倍晋三元総理大臣はもういない。「トランプ大統領復帰」で日本は、東アジアは、ウクライナは、中東は、どうなるのか?


最新の投稿


【読書亡羊】初めて投票した時のことを覚えていますか? マイケル・ブルーター、サラ・ハリソン著『投票の政治心理学』(みすず書房)

【読書亡羊】初めて投票した時のことを覚えていますか? マイケル・ブルーター、サラ・ハリソン著『投票の政治心理学』(みすず書房)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


【今週のサンモニ】暴力を正当化し国民を分断する病的な番組|藤原かずえ

【今週のサンモニ】暴力を正当化し国民を分断する病的な番組|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


正常脳を切除、禁忌の処置で死亡!京都第一赤十字病院医療事故隠蔽事件 「12人死亡」の新事実|長谷川学

正常脳を切除、禁忌の処置で死亡!京都第一赤十字病院医療事故隠蔽事件 「12人死亡」の新事実|長谷川学

正常脳を切除、禁忌の処置で死亡――なぜ耳を疑う医療事故が相次いで起きているのか。その実態から浮かびあがってきた驚くべき杜撰さと隠蔽体質。ジャーナリストの長谷川学氏が執念の取材で事件の真相を暴く。いま「白い巨塔」で何が起きているのか。


トランプ前大統領暗殺未遂と政治家の命を軽視する日本のマスメディア|和田政宗

トランプ前大統領暗殺未遂と政治家の命を軽視する日本のマスメディア|和田政宗

7月13日、トランプ前大統領の暗殺未遂事件が起きた。一昨年の安倍晋三元総理暗殺事件のときもそうだったが、政治家の命を軽視するような発言が日本社会において相次いでいる――。


【今週のサンモニ】テロよりもトランプを警戒する「サンモニ」|藤原かずえ

【今週のサンモニ】テロよりもトランプを警戒する「サンモニ」|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。