南モンゴル(中国の内モンゴル自治区)は今、大きく揺れている。小学生から高校生までの児童・生徒、そしてその保護者とメディア関係者、大学教師、公務員など、モンゴル人は民族を挙げて中国政府の文化的ジェノサイド政策に反対の声を上げている。
中国が企む歴史と文化の抹殺
ことの発端は6月末に明るみに出た政策だ。今秋から逐次、モンゴルの民族学校でも授業を中国語に切り替えていくとの政策だ。モンゴル人の「国語」にあたる「モンゴル語」の授業だけを残し、他は全部、異民族の言葉、中国語で実施するという。モンゴル人が中国語を「キタド・ケレ」(漢人の言葉)と呼んできたのも禁止され、代わりに「母国語」と呼ぶよう強制された。これは、モンゴル人の母語はモンゴル語ではなく、中国語だと嘘をつくよう強要されたことを意味している。
私は早い段階で北京当局の陰謀を把握し、反対の署名活動を始めた。モンゴル人の多くは当時、正式な文書がないから大丈夫だろう、と甘く判断していた。ところが、数十万冊もの新しい教科書が届き、開いてみると、何と、国語の第一課は「私は中国人」と中国語で印刷されているではないか。モンゴルの物語や民謡はもとより、「モンゴル」という言葉自体がすべて消えていた。モンゴルの歴史と文化が抹殺されている現実に直面して、子どもたちとその保護者、いや、モンゴル人全体の怒りが爆発したのである。ここから、自治区全体で授業をボイコットし、反対の署名を呼びかける運動が燎原の火の如く全モンゴル人地域に広がっていった。