立憲民主党が国民民主党の大部分などと合流し、野党の大きな塊が生まれたが、旧「民主党」の焼き直しにすぎず、新鮮味に欠ける。新代表選びの討論会でも、国内に目を向けた議論ばかりで、厳しい国際情勢を睨んでの発言はなかった。同じことを同時期に行われた自民党総裁選の論議でも感じたが、日本の政治家の多くは世界の戦後体制に大変化が生じていることへの認識が甘い。
前例のない労組主導の政党づくり
今回の政界再編劇は、野党の結集なしに総選挙を戦えないとの危機感に駆られ、右往左往した結果であることは誰の目にも明らかである。問題は、連合という労働組合の中央団体が立憲民主、国民民主の両党を呼びつけ、合流の判をつかせたことだ。労組主導の政党づくりは前例がない。かつて社会党は「総評政治部」と揶揄やゆされたが、ここまで露骨に労組の言いなりにならなかった。政党と労組の関係の一線を越えるものだ。労組が政党支持で股裂きを避けるという自己都合を優先した。政党は国民全体の利益を考え、労組は組合員もしくは労働者の利益を考える集団だ。かつて左右社会党の統一でも、両党は議論を重ね、統一綱領を作り上げた。今回とは全然違う。
この新党の特徴は、一口で言えば「反原発・親共産」だ。
このあとに来るのは、共産党、社民党などとの国政における選挙協力だ。というより、これが本来の狙いだ。ところが、この選挙協力で、どんな日本をつくり上げるのか、その構想が見えない。自民党と社会党が対峙したいわゆる55年体制の時代には、民社党と公明党との選挙協力、社会党と公明党との選挙協力があった。しかし、そのためお互いに政権構想を練り上げた。中道連合政権構想、社公政権合意などだ。これは結構時間をかけて作った。今、次の総選挙へ向けて野党間で政権構想を練り上げようという動きはない。「反自民」の野合になりかねない。
統一戦線戦術の罠にはまるか
この再編の動きの背景には、反自民の政権樹立に再び執念を燃やす小沢一郎氏と、共産党がいると見る。共産党は、今年1月の党大会でも「共産党排除の壁」が崩れたと鼻息が荒い。昨年の参院選挙では「市民連合」というトリックを使い、他の野党に13項目の政策要求を押しつけた。安保法制廃止、防衛費削減、辺野古基地建設中止、改憲阻止、原発ゼロ、消費税引き上げ中止など、日本を破滅させる項目を並べた。このままだと共産党に同じ手を使われる。
野党はこの体たらく、自民党も安倍晋三首相の失速で、改憲のめどが立たない。この停滞した状況を壊すためには、国民民主党の残留組が日本維新の会と提携し、連合の民間産別(民間系の産業別労働組合)が頑張り、新たな改憲勢力を形成して自民党と渡り合うことである。新たな政治の枠組みづくりの方向に進むなら、ピンチはチャンスになる。(2020.09.14国家基本問題研究所「今週の直言」より転載)