バイデン陣営が答えるべきこと|島田洋一

バイデン陣営が答えるべきこと|島田洋一

「バイデンが当選すれば、中国が我々の国を乗っ取る」とトランプ大統領。オバマ政権の副大統領だったバイデン氏。中国に完全にコケにされたオバマ政権の総括も、対中政策を今後どうすべきかについても未だ沈黙を貫く。バイデン氏は米大統領候補者として適格なのか?


中国共産党政権(以下中共)が覇権を握れば、自由で人間的な文明は地を払う。中共にどう立ち向かうか。世界が米大統領選の両候補に関し、最も注視するのはそこである。

バイデン民主党大統領候補はオバマ政権の副大統領だった。2015年、訪米した習近平中国国家主席はオバマ大統領(当時)との共同記者会見で、①サイバー犯罪に共同で戦うとの重要合意に達した②(南シナ海の)南沙諸島での建設行為に軍事化の意図はない―と明言した。

しかし、米連邦捜査局(FBI)によれば、それ以降、中共による知的財産の窃取行為(サイバー攻撃を含む)は一段と活発化している。南シナ海の軍事化も進む一方である。要するに、バイデン氏を含むオバマ政権は完全にコケにされた。トランプ大統領は「バイデンが当選すれば、中国が我々の国を乗っ取る」と言う。

出てこない対中対抗策

Getty logo

Getty logo

バイデン氏には、その経緯を総括し具体的対抗策を明示する責任がある。しかし、未だ為されず、失言を恐れて批判的メディアの質問も受け付けない。

バイデン氏から今さら一般論を聞く意味はない。バイデン氏は「ジュージュー焼く音は聞こえるがステーキが出てこない」(he sells the sizzle but is short on the steak)すなわち立派な演説はするが実行力がないと批判されたことがある、と回顧録に率直に記している。

トランプ政権は、賛否はあっても具体的措置を実行してきた。懲罰関税発動、中国ハイテク企業への制裁、「航行の自由作戦」強化、台湾との関係促進、中共のスパイや協力者の摘発強化などである。言い換えると、トランプ大統領は、焼き加減に問題はあっても、着実にステーキを出してきた。今やその突破力を疑う者はいない。

米議会で対中強硬策を打ち出してきたのも、トランプ氏と盟友関係にある共和党議員たちである。香港弾圧、ウイグル人迫害に対する制裁法、台湾との関係強化法を先導したのはルビオ(フロリダ州)、クルーズ(テキサス州)両上院議員ら共和党の保守派だった。

8月10日、中共は香港問題に関して6人の米議員に制裁を科したが、全員が共和党である。これより先、ウイグル問題で4人の米政治家を入国禁止としたが、やはり全員共和党である。中共のテクノロジー獲得「千人計画」に絡むスパイ摘発を議会で主導してきた上院捜査小委員長のポートマン議員(オハイオ州)も共和党である。

この間、民主党副大統領候補のハリス上院議員(カリフォルニア州)は目立った発信をしていない。

見えない統率力

バイデン氏は民主党のリーダーとして、また長年議会に籍を置いた身として、対議会統率力で大いにトランプ氏との差を見せつけねばならないはずだが、何ら動きがない。ハリス氏は大統領選に名乗りを上げたものの、極左に迎合しては中間派寄りに立場の修正を繰り返して陣営が内紛状態に陥り、結局、予備選開始前に撤退に追い込まれた。バイデン氏以上に統率力を欠く

現状では、バイデン氏は期待できない既知数、ハリス氏は期待できない未知数と言わざるを得ない。。( 2020.08.24 国家基本問題研究所「今週の直言」より転載)

島田洋一

https://hanada-plus.jp/articles/404

福井県立大学教授、国家基本問題研究所評議員・企画委員、拉致被害者を救う会全国協議会副会長。1957年大阪府生まれ。京都大学大学院法学研究科政治学専攻博士課程修了。著書に『アメリカ・北朝鮮抗争史』など多数。

国家基本問題研究所「今週の直言」
国家基本問題研究所「入会のご案内」

関連する投稿


日本学術会議は即刻、解散せよ!|島田洋一

日本学術会議は即刻、解散せよ!|島田洋一

政府の防衛事業を組織を挙げて妨害する、人事はすべて自分たちで決める、黙って税金からカネを出せといった虫の良い話をいつまで許すのか?政府は6人の任命拒否をこう説明すべきだろう。「この6人には税金を使って提言してもらうほどの見識がなく、また国際交流に関与させると国益を損なう言動をする可能性が高いと判断した」と。


2050年脱炭素化には原子力活用しかない|奈良林直

2050年脱炭素化には原子力活用しかない|奈良林直

「2050年までに二酸化炭素(CO2)の排出を実質ゼロにする脱炭素社会の実現を目指す」と宣言した菅義偉首相。その一連の発言には、安全な原発の新増設への端緒をつくろうとする菅首相の深謀遠慮が冴え渡る。理想論ではない、CO2の排出ゼロ実現のための現実的な解を示す。


中台関係は「準戦争状態」|矢板明夫

中台関係は「準戦争状態」|矢板明夫

中国が台湾に侵攻した場合「台湾のために戦う」と答えた人が77.6%と、史上最高の数字を記録した。中台間で武力衝突が起きれば、沖縄の米軍基地が中国によって攻撃されることも十分考えられる。日本にとって決して人ごとではない。日本国民はもっと台湾海峡の情勢に目を向けるべきだ。


中国の攻撃性が「クアッド・プラス」を動かす|湯浅博

中国の攻撃性が「クアッド・プラス」を動かす|湯浅博

中国の最大の懸念は、クアッドが拡大してNATOのような「締約国に対する武力攻撃を全締約国に対する攻撃とみなす」という「ハード・アライアンス」(強固な軍事同盟)に変貌し、中国包囲網がつくられることである。


学術会議を乗っ取った左翼組織|奈良林直

学術会議を乗っ取った左翼組織|奈良林直

全国の大学の学問の自由を奪う実働部隊と連動し、NHKや朝日新聞、北海道新聞、しんぶん赤旗などと一緒になって圧力をかけた――日本学術会議を事実上乗っ取り、学術会議の権威を使って我が国の防衛研究を阻害してきた左翼組織の実態。


最新の投稿


永田町権力闘争の舞台裏~菅政権誕生編|大下英治

永田町権力闘争の舞台裏~菅政権誕生編|大下英治

かつて中曽根政権が安定したのは、田中角栄がキングメーカーとしてスタートを切らせたからだ。菅政権も二階俊博のおかげで安定したすべり出しとなった。さらに安倍晋三が背後から支え続ける。 菅政権は、2021年9月までの短期政権どころか、長期政権の雰囲気すら漂ってくる。 


「2021年1月号」新聞広告大公開!

「2021年1月号」新聞広告大公開!

1月号の新聞広告は、●●なし!伏字ファンの皆さま、申し訳ございません…。「Hanadaも丸くなったのか?」。違います。報道しない自由を大手メディアが行使するなか、弊誌は今月号もタブーなしのストレート勝負です!広告がおもしろければ、雑誌もおもしろい!雑誌がおもしろければ、広告もおもしろい!いま読みたい記事が、ここにはある!


月刊『Hanada』2021年1月若水号

月刊『Hanada』2021年1月若水号

「報道しない自由」で国民を情報弱者にする大手メディアに喝!1月号の総力大特集は「日米メディアが報じないトランプVSバイデン全内幕」。米大統領選をめぐり数々の陰謀論が飛び交っているが、日米メディアの多くが「反トランプ」であり、露骨な偏向報道をしているのは事実だ。「米大統領選中も続く中国の侵略」「NHK『軍艦島ドキュメント』偏向の全手口」「ウイグル人強制労働プログラム」「川勝平太静岡県知事の正体」など1月号もあらゆる問題の“中心”にタブーなしで切り込む!


ファーウェイ、Zoom、TikTok…核より怖い中国のサイバー兵器|山崎文明

ファーウェイ、Zoom、TikTok…核より怖い中国のサイバー兵器|山崎文明

日本は脆弱すぎる!世界で多発する中国の情報窃取。事件は既に日本でも起きている!ファーウェイ、Zoom、TikTok…核より怖い中国のサイバー兵器に食い物にされる日本の危うさ。


日本学術会議は即刻、解散せよ!|島田洋一

日本学術会議は即刻、解散せよ!|島田洋一

政府の防衛事業を組織を挙げて妨害する、人事はすべて自分たちで決める、黙って税金からカネを出せといった虫の良い話をいつまで許すのか?政府は6人の任命拒否をこう説明すべきだろう。「この6人には税金を使って提言してもらうほどの見識がなく、また国際交流に関与させると国益を損なう言動をする可能性が高いと判断した」と。