三種の武漢ウイルス 「集団免疫」という起死回生|山口敬之

三種の武漢ウイルス 「集団免疫」という起死回生|山口敬之

「安倍政権は死因までも誤魔化しているのだ」。安倍政権のコロナ対応は失敗だったのか。日本はウイルスの抑え込みに最も成功した国であるにもかかわらず、なぜ、支持率は急落したのか。安倍政権の一連の対応を振り返りながら、“集団免疫獲得”の実像に迫る!L型の流入の有無こそが、日米伊の分水嶺となった――。


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この時は、誰もが中国人の流入を止めれば感染拡大も止められると信じていた。

実際、その後2週間あまり、イタリア国内での感染者は発見されなかった。イタリア人初の感染確認は2月18日、ミラノ近郊のコドーニョという小さな街の男性だった。ここからイタリアの悪夢が始まった。

感染者が倍々ゲームで増えたことから、わずか5日後にはコドーニョと周辺の町が封鎖され、近くの最大都市ミラノでも学校が一斉休校となった。その後も感染は北部一帯に急速に拡大し、2月末には北部ロンバルディア州での悲惨な医療崩壊が始まった。コンテ首相の勝利宣言からわずか1カ月後のことだった。

その後、全土の封鎖という最強硬措置も虚しく、イタリアの死者数は4月13日には2万人を突破。震源の中国を抜いた。人口が中国の二十分の一に過ぎないイタリアの死者数は、中国なら40万人が死んだ計算となる。感染発見から最速で中国との往来を止め、都市封鎖、さらに全土封鎖と、打てる手はすべて打ってきたはずのイタリアが、なぜ世界最悪の惨状に見舞われなければならなかったのか。

そして、イタリアに遅れること2週間あまり、今度はアメリカで感染爆発が始まった。その後、アメリカは感染者、死者ともに世界最悪の数字を更新し続け、私たちは超大国の大都市ニューヨークでの医療崩壊という、信じられない事態を目の当たりにした。

なぜ、中国との往来をいち早く遮断した米伊が世界最悪の感染者数と死亡者数を記録した一方で、中国人を受け入れ続けた日本の感染者数・死亡者数・致命率が、一貫して世界最低水準を維持しているのだろうか。

これについて一時期よく言われたのが、「安倍政権はPCR検査を減らすことで感染者数を圧縮している」という批判だった。日本国内のみならず、欧米のメディアも批判的に報じた。

安倍政権は死因までも誤魔化している――

日本政府としては、2月1日に武漢ウイルスを指定感染症とした結果、検査で陽性となった人物は、たとえ症状がほとんどなくても隔離する必要が生じた。だから、PCR検査の対象を医師が必要を認めた患者に絞ることで、医療崩壊を防ごうとしたのだ。

この結果、軽症者や無症状者まで検査対象を広げた韓国やイタリアと比較すれば、日本の検査数は3月下旬時点で1万5千人程度と(4月12日時点では約6万3千人)、人口比率でいえば韓国の約50分の1、イタリアの約30分の1となった。だから、安倍政権に批判的な勢力は「日本の本当の感染者は発表数の数倍、数十倍だ」と批判したのである。

ところが、この理論に従えば、ただでさえ低い日本の致命率(4月13日段階で1.4%程度)が、さらに下がってしまうことになる。致命率とは、感染した人のうちの何人が死ぬかを示す数値だからだ。もし安倍政権が感染者数を隠蔽しており、実際の感染者が5倍いたと仮定しよう。すると日本の致命率は、0.3%という数字になってしまうのである。

一部の反安倍勢力からは、「安倍政権は死因までも誤魔化しているのだ」という根拠のない主張も出た。しかし、実際は武漢ウイルスによる死者は確実にカウントされている。重篤な肺炎患者は、生前からウイルス検査とCTスキャンによって、武漢ウイルスに罹患しているかどうか徹底的に判定され、不審な死者も検査する。患者と死者が武漢ウイルスかどうかを見据えない限り、医師自身と医療スタッフの生命にかかわるからだ。

そもそも、共産党系の病院が日本中に数多く存在し、反安倍政権を公言する医師は枚挙に遑がない。そんな現実のなかで、安倍政権の死因歪曲に日本中の医師がこぞって加担しているという主張自体に、いかに無理があるかは説明するまでもあるまい。

最も感染しやすいのは日本人男性?

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