官僚を吊るし上げる、愚劣な政治ショー
菅原一秀前経済産業相、河井克行前法相と立て続けに閣僚が辞任し、間髪を容れずに、萩生田光一文部科学相は大学入学共通テストに導入される英語民間検定試験の本年度からの実施見送りを表明しました。
首相主催の「桜を見る会」は、本年度の開催が中止。立憲民主党や国民民主党などの主要野党は、さぞかし喜んでいることでしょう。見るからに大はしゃぎです。
しかし、閣僚の辞任は週刊誌報道がきっかけで、野党はその報道に乗っかって大騒ぎしたに過ぎません。英語民間試験は、このまま実施されていれば混乱は必至でしたので、見送りは賢明な判断と言えます。
もちろん、文科省の準備不足は批判に値します。官邸サイドが、不安をあおり立てる野党の動きを警戒した側面があるのも否めません。
野党が地道にこの問題に取り組んできたのは間違いありません。しかし、その姿勢は「受験生ファースト」というよりは、むしろ「『打倒安倍政権』ファースト」で、若者の人生を左右しかねないこの問題を政局に利用していると言えましょう。決して褒められたものではありません。
「桜を見る会」をめぐる問題にしても、令和2年度予算案の編成が本格化するなか、まるで国家の一大事といわんばかりの言動には呆れるばかりです。そして、あらゆる問題について、騒ぎ立てるツールとして利用しているのが「野党合同ヒアリング」です。
これは立憲民主党、国民民主党、共産党などの野党が合同で、マスコミフルオープンのもと、さまざまなテーマについて関係省庁の官僚を呼びつけ、事実関係を追及するというものです。
官僚を吊し上げて、自らの正当性を訴えようという「愚劣な政治ショー」と言って差し支えないでしょう。
あまりの品のなさに与野党双方から批判が上がり、国民民主党の大塚耕平共同代表(当時)は平成30年5月10日の記者会見で、「官僚として真摯に仕事をしている皆さんとの関係を健全な姿で維持するためには、野党ヒアリングの在り方について熟慮すべき点がある」と見直しを表明したことがあります。
「国会審議の場でしっかり時間が確保されて誠実な答弁が行われるならば、極力、国会の質疑のなかで行っていくべきだ」とごもっともな意見も述べています。
あれから約1年半が経過しましたが、何も変わっていません。この追及方式はマンネリ化していますが、官僚バッシングは依然健在です。
「桜を見る会」をめぐる茶番劇
それでは、その様子をのぞいてみましょう。11月14日に国会内で行われた「第3回 総理主催『桜を見る会』追及チーム」の会合。
「合同ヒアリング」と銘打ってはいませんが、衆院本館2階の第16控室という開催場所といい、官僚を呼びつけて根掘り葉掘り追及するスタイルといい、やっていることは合同ヒアリングと全く同じです。
内閣府や内閣官房、総務省など関係省庁の官僚約20人が居並ぶなか、向かい合う形で約15人の野党議員が着席し、傍聴席には野党クラブの記者やフリージャーナリスト、一般傍聴人ら数十人が詰めかけ、「満員御礼」状態でした。
蛇足ではありますが、出席議員のうち衆院の野党統一会派「立憲民主・国民・社保・無所属フォーラム」の柚木道義衆院議員(無所属)は正面を向いて座るのではなく、ばっちりテレビに映るように、テレビカメラがある方向に斜め向きに座っていました。
合同ヒアリングでは、もはや見慣れた光景です。
会合は午後4時に開始しました。座長の立憲民主党の黒岩宇洋衆院議員がしらじらしくも深刻な表情で、「私たちは『桜を見る会』の税金の無駄遣いとか私物化(の追及)に留まることなく、解明すべき本丸は総理自身にかかっている2つの違法疑惑です。1つは政治資金規正法違反。小渕優子衆院議員観劇ツアーに非常に類似してます……」などと語る姿は噴飯ものでした。
こんなところで過去の傷をほじくり返され、小渕氏もさぞかし迷惑だったのではないでしょうか。
この問題を主導している副座長の共産党、田村智子参院議員の挨拶を経て、再びマイクを握った黒岩氏は「安倍総理自身への疑惑については、官僚に責任があると思っているわけではないんです。それに付随する事実関係はお役所の方がご存じですし、ご協力いただきたい」と物腰は非常に柔らかかったのですが、野党側の丁寧な対応はここまででした。
国民民主党の奥野総一郎衆院議員が「平成15年に政府が開示したとされる招待客リストがあるらしいのですが、開示内容は?」と質問すると、内閣官房の役人は「おそらく保存期間は過ぎていると思われまして……」と答弁。奥野氏は「おそらくというんじゃなくて、もう1度、きちんと調べていただきたい!」と叱責しました。
奥野氏は総務省が保存している「桜を見る会」の関係文書の提示も求めましたが、総務省などがこれを拒むと、他の野党議員から「何の不都合があるんだ!」 「みんなで隠そうとしている!」とヤジが飛び交う始末でした。