『国家の生贄』執筆に込めた想い|福田ますみ

『国家の生贄』執筆に込めた想い|福田ますみ

偏見にとらわれたメディアや国民感情が暴走すると、国や政府、警察、司法までがそれに迎合して、いとも簡単に民主主義、法治主義の原則を踏みにじる恐怖。これはロシアや中国の話ではない。法治国家であるはずのこの日本で現実に起きていることなのだ。


先入観なしに読んでもらえれば幸いである→https://amzn.to/4rshWmX

ついでに言えば、数年前ブームになった韓国に対する批判本を、ヘイト本、つまり韓国に対する差別本だとしてやり玉に挙げ、書店の店頭から撤去せよと迫ったリベラル人士たちがいた。しかしその同じリベラル人士たちはいまや、韓国発祥の宗教団体に対し嬉々として、「壺」は言うに及ばず「反日邪教」という差別的なレッテル張りをしている。そもそも彼らは、「反日」という言葉を忌み嫌っていたはずである。まあ彼らにもぜひこの本を読んでほしいが、それは無理というものか。

戦後最悪の人権侵害をなぜ全く報じないのか?

私がこの本において最も強調したいのは、家庭連合の信仰を持っているというただそれだけの理由で、これまでに4300人以上の信者が、精神病院やマンションに拉致監禁され、暴力的に棄教を迫られた事実である。私はこれを、「戦後最悪の人権侵害」と名付けている。信者を直接、拉致監禁したのは実は信者の親族だが、それを指導・教唆した人々がいる。信者に対する強制改宗を請け負うプロの脱会屋と、家庭連合の教義を異端とみなすキリスト教の牧師たちである。親族は彼らから、「統一教会は犯罪者集団だ」「信者は犯罪者になる」などと嘘を吹き込まれ不安を煽られた挙句、我が子への拉致監禁に手を染めたのである。

教団から脱会しない限り解放されないため、囚われの身となった信者たちは必死に逃れようとした。3階の監禁部屋から飛び降りて腰椎を粉砕骨折した者、6階から墜落して奇跡的に命は助かったが、高次機能障害を負った者、絶望して自殺した者、レイプされた若い女性信者もいる。夫婦の一方が拉致監禁され、家族と生木を裂くように別れさせられた者もいる。

ところが、これほどの事件をメディアは全く報じようとせず、驚くべきことに、警察もまったく動かなかったのだ。えっ、どうしてなぜなのか? 私は、冒頭の素朴な疑問を共有する読者にこそ本書を読んでほしいと願う。

一弱小宗教に対し偏見にとらわれたメディアや国民感情が暴走すると、国や政府、警察、司法までがそれに迎合して、いとも簡単に民主主義、法治主義の原則を踏みにじってしまう。私はその恐ろしさを訴えたつもりである。一読し、ロシアや中国ではない、この日本で実際にこんなことが起きているのだと認識していただければありがたい。

福田ますみ

https://hanada-plus.jp/articles/248

1956年、横浜市生まれ。立教大学社会学部卒。専門誌、編集プロダクション勤務を経て、フリーに。犯罪、ロシアなどをテーマに取材、執筆活動を行っている。著書に『スターリン 家族の肖像』(文藝春秋)、『暗殺国家ロシア 消 されたジャーナリストを追う』(新潮社)などがある。2007年に『でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相』(新潮社)で第六回新潮ドキュメント賞を受賞。

関連する投稿


真昼の暗黒! 対家庭連合特別法|杉原誠四郎

真昼の暗黒! 対家庭連合特別法|杉原誠四郎

令和五年に、対家庭連合(旧統一教会)に対する特別法が制定されたが、実はこの法律にはとんでもない規定が並んでいた!


「住む場所も収入も失った。自殺するしかない」 成年後見制度の報じられない地獄|長谷川学

「住む場所も収入も失った。自殺するしかない」 成年後見制度の報じられない地獄|長谷川学

成年後見制度の実態が国民にほとんど知らされていないのはなぜなのか? 制度を利用したばかりに民主主義国家にあるまじき凄まじい人権侵害を受け、苦しんでいる人が大勢いる。法制審議会は成年後見制度の見直しに向けた議論を行っており、今年6月10日に見直しに関する中間試案を公表したが――。


日本国は宗教に冷淡|上野景文(文明論考家)

日本国は宗教に冷淡|上野景文(文明論考家)

統一教会への解散命令で、政教分離のあり方に注目が集まっている。 日本の政教分離は、世界から見てどうなのか――。


なぜ今なのかが不可解な旧統一協会解散請求|西岡力

なぜ今なのかが不可解な旧統一協会解散請求|西岡力

これは宗教団体に対する「人民裁判」ではないか。キリスト教、仏教、神道などのリーダーを含む宗教法人審議会が解散命令請求に全会一致で賛成したことに戦慄を覚えた。


国民栄誉賞受賞ジャーナリストの不当逮捕に習近平の影|石井英俊

国民栄誉賞受賞ジャーナリストの不当逮捕に習近平の影|石井英俊

いま民主主義国であったはずのモンゴル国が、独裁国家中国によってその色を塗り替えられようとしている。そのような中、高市早苗大臣が会長を務める「南モンゴルを支援する国会議員連盟」が世界を動かした!


最新の投稿


【消偽求実 第二号 第一部】中国、台湾包囲軍事演習のターゲットは「高市発言」|遠藤誉【2026年3月号】

【消偽求実 第二号 第一部】中国、台湾包囲軍事演習のターゲットは「高市発言」|遠藤誉【2026年3月号】

月刊Hanada2026年3月号に掲載の『【消偽求実 第二号 第一部】中国、台湾包囲軍事演習のターゲットは「高市発言」|遠藤誉【2026年3月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


【読書亡羊】「道産子アメリカ人」が静かに鳴らす警鐘が聞こえるか  ジョシュア・W・ウォーカー『同盟の転機』(日本経済新聞出版)|梶原麻衣子

【読書亡羊】「道産子アメリカ人」が静かに鳴らす警鐘が聞こえるか ジョシュア・W・ウォーカー『同盟の転機』(日本経済新聞出版)|梶原麻衣子

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


対中戦略立て直しの絶好のチャンス|櫻井よしこ×垂秀夫【2026年3月号】

対中戦略立て直しの絶好のチャンス|櫻井よしこ×垂秀夫【2026年3月号】

月刊Hanada2026年3月号に掲載の『対中戦略立て直しの絶好のチャンス|櫻井よしこ×垂秀夫【2026年3月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


【今週のサンモニ】相変わらず「悪魔の照明」を求めるサンモニ|藤原かずえ

【今週のサンモニ】相変わらず「悪魔の照明」を求めるサンモニ|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


「訳アリ物件」の奇妙な話|なべやかん

「訳アリ物件」の奇妙な話|なべやかん

大人気連載「なべやかん遺産」がシン・シリーズ突入! 芸能界屈指のコレクターであり、都市伝説、オカルト、スピリチュアルな話題が大好きな芸人・なべやかんが蒐集した選りすぐりの「怪」な話を紹介!信じるか信じないかは、あなた次第!