「表現の不自由展」はヘイトそのものだ|門田隆将

「表現の不自由展」はヘイトそのものだ|門田隆将

「表現の不自由展」初の実体験レポート!月刊『Hanada』2019年10月号(完売御礼!)に掲載され、大反響を呼んだ門田隆将氏のルポを特別に全文公開!本日の午後、「表現の不自由展・その後」が再開されましたが、門田隆将氏のルポは8月3日、つまりは中止になる前日の模様を描いた希少な体験記です。


「表現の不自由展」はヘイトそのものだ

昭和天皇
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8月3日午前11時、私は名古屋市東区の愛知芸術文化センタービル10階の愛知県美術館チケット売り場に並んでいた。

この日の名古屋は最高気温34.8度が示すように朝からぐんぐんと温度計の目盛りが上昇。汗がねっとりと首にまとわりつく典型的な熱暑の1日だった。

広い吹き抜けの空間は冷房があまり効いておらず、汗が滲む中、チケット売り場には、200人近くが並んでいた。

だが、窓口には職員が2人しかいない。緩慢な切符の売り方に、列は時間が経つごとに長くなっていった。窓口の2人も、やがて片方が消え、1人だけの販売になる。あまりのサービス精神の欠如に、私は近くの職員に「この長蛇の列が目に入りませんか? なぜ売り場に1人だけなんですか。おかしいと思いませんか」と言った。

しかし、職員は「申し訳ありません」というだけで何もしない。私は同じフレーズをこの入口だけで別々の職員に3回も言う羽目になる。

しかも、チケットをやっと買って中に入っても「順路」の案内がない。仕方がないので左側に歩を進めたら「順路はあっちです」と職員に注意されてしまった。順路を示す印も出さないまま「順路はあっちです」と平然と言う職員。これほど観覧者をバカにした芸術祭も珍しい。

(ああ、きっと県の職員がやっているんだろう)

私は、観る側のことを全く考慮に入れていない様子に、公務員なら「さもありなん」と勝手に解釈した。職員のレベルの低さ――まず、それが私の最初の印象だ。

SNS投稿禁止という矛盾

芸術祭のテーマは「情の時代」である。パンフレットには〈「情の時代」とは、いかなるものでしょうか。そこではきっと、私たちの習慣的な知覚を揺さぶる視点、例えば、動物の視点、子供の視点、いま・ここから遠く離れた「誰か」の視点などが盛り込まれることでしょう〉とある。何が言いたいのかよくわからない文章だが、芸術祭にはままあることだ。

私は、まず10階の展示をひとまわりした。この手の作品は、作家の意図が伝わるものと、そうでないものとが明確に分かれる。いったい何を表したいのだろう、という作品もあれば、ストレートに心に飛び込んでくるものもあった。ひと通り10階の観覧を終えた私は、いよいよ「表現の不自由展・その後」の会場がある8階に向かった。

同展示は、日本国内の美術館やイベント等で撤去や公開中止になった作品ばかり20点以上を集めた企画である。すでに公開中止になったものを集めて展示するのだから、「あいちトリエンナーレ」にとって当然、覚悟の催しということになる。私も、「いったいどんなものなのか」と興味が湧いた。
8階には長い列ができている場所があり、すぐに「あそこか」とわかった。近づくと職員が「待ち時間は1時間ほどです」と叫んでいる。まさか1時間も? そう思いながら列に並んだ。

すでに100人以上が並んでおり、人々の関心の高さが窺えた。やがて30分ほどで会場の入口に来た。意外に早い。

「展示品の写真撮影は結構です。ただし、SNS(ソーシャルネットワーク)への使用はお断りしています」

観覧にあたっての注意事項をスタッフが1人ひとりに伝えている。また、そのことを書いた「撮影写真・動画のSNS投稿禁止」という注意書きが入口手前に掲示されていた。どうやら「表現の不自由展」には、観る側も「不自由」が強制されるものらしい。そういう不自由さについて訴えるはずの展示なのに、「自己矛盾」に気づかないところが主催者のレベルを物語っている気がした。

昭和天皇の顔を損壊

入口には、白いカーテンがかかっている。めくって中へ入ると、幅2メートルもない狭い通路に、ぎっしり人がいた。左右の壁に作品が展示されており、それを人々が食い入るように見つめている。

手前の右側には、いきなり、昭和天皇を髑髏が見つめている版画があった。最初から“メッセージ性”全開だ。

反対の左側に目を向けると、こっちは昭和天皇の顔がくり抜かれた作品が壁に掛けられている。背景には大きく×が描かれ、正装した昭和天皇の顔を損壊した銅版画だ。タイトルは「焼かれるべき絵」。作者による天皇への剥き出しの憎悪がひしひしと伝わってくる。

(……)

皆、無言で観ている。声を上げる者は1人もいない。私も言葉を失っていた。

その先には、モニターがあり、前にはこれまた「無言の人だかり」ができている。

やはり昭和天皇がモチーフだ。昭和天皇の肖像がバーナーで焼かれ、燃え上がっていくシーンが映し出される。奇妙な音楽が流れ、なんとも嫌な思いが湧き上がる。

次第に焼かれていく昭和天皇の肖像。すべてが焼かれ、やがて燃えかすが足で踏みつけられる。強烈な映像だ。作者の昭和天皇へのヘイト(憎悪)がストレートに伝わる。

よほど昭和天皇に恨みがあるのだろう。これをつくって、作者はエクスタシーでも感じているのだろうか。そんな思いで私は映像を見つめた。思い浮かんだのは「グロテスク」という言葉だった。

画面は切り替わり、若い日本の女性が、母親への手紙を読み上げるシーンとなる。

「明日、インパールに従軍看護婦として出立します」

「私の身に何が起こっても、お国のために頑張ったと誉めてくださいね」

そんな台詞を彼女は口にする。インパール作戦は、昭和19年3月から始まった補給もないまま2,000メートル級のアラカン山脈を踏破する過酷な作戦だ。とても看護婦が同行できるようなものではない。

私自身が拙著『太平洋戦争 最後の証言』シリーズ第2部の「陸軍玉砕編」で、この作戦の生き残りに直接取材し、飢餓に陥って数万の戦死・餓死者を出し、白骨街道と化した凄まじいありさまをノンフィクションで描いている。おそらくこの映像作品は真実の歴史など“二の次”なのだろう。

やがて、海岸の砂浜にドラム缶が置かれた場面となり、そのドラム缶が爆発し、宙に舞う。まったく意味不明だ。

私の頭には、「自己満足」という言葉も浮かんできた。これをつくり、展示してもらうことで作者は溜飲を下げ、きっと自らの「創造性(?)」を満足させたのだろう。

しかし、私には、取材させてもらった老兵たち、つまり多くの戦友を失った元兵士たちがどんな思いでこれを観るだろうか、ということが頭に浮かんだ。そして一般の日本人は、これを観て何を感じるだろうか、と。

当時の若者は日本の未来を信じ、そのために尊い命を捧げた。私たち後世の人間が、2度とあの惨禍をくり返さない意味でもその先人の無念を語り継ぐことは大切だ。少なくとも私はそういう思いで10冊を超える戦争ノンフィクションを書いてきた。

昭和天皇
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昭和天皇
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怒号が起こった少女像前

少女像が展示されているのは、この作品群の先である。通路を出て広い空間に出たら、そこにはテントのような作品がまん中に置かれ、左奥に少女像があった。

少女像を人が取り囲んでいる。いきなり、

「やめてください」

「なぜですか!」

そんな怒号が響いてきた。観覧者の1人が少女像の隣の椅子に座り、紙袋をかぶっている。どうやら、その紙袋を少女像にもかぶせようとしたらしい。

それを阻止されたようだ。少女像のある床には、〈あなたも作品に参加できます。隣に座ってみてください。手で触れてみてください。一緒に写真も撮ってみてください。平和への意思を広めることを願います〉という作者の呼びかけがあり、それを受けて隣の席に座ろうとする人間もそれなりにいるようだ。

「やめてください」と叫んだ人は、どうやら展示の案内人らしい。観覧している人から質問をされたら答え、抗議されたら、それに応えるためにここにいるようだ。ご苦労なことだ。なかには過激な抗議をする人もいるだろう。いちいちこれに対応するのは大変だ。

少女像と一緒に写真を撮りたい人がいれば、この人はシャッターも押してあげていた。この日、美術館で最も大変な“業務”に就いていた人は間違いなくこの人物である。

怒号はすぐに収まり、何事もなかったような空間に戻った。

少女像の解説文に「性奴隷」

日本人はおとなしい。ひどい作品だと思っても、ほとんどが抗議をするでもなく、無言で観ていた。その代わり、ひっきりなしにカメラやスマホのシャッター音が響いている。

少女像自体は、どうということはない。あのソウルの日本大使館前や、世界中のさまざまな場所に建てられている像だ。その横にはミニチュアサイズの少女像も展示されていた。さらにその左側の壁には、元慰安婦の女性たちの写真も掲げられている。

私は少女像の説明書きを読んでみた。〈1992年1月8日、日本軍「慰安婦」問題解決のための水曜デモが、日本大使館前で始まった。2011年12月14日、1000回を迎えるにあたり、その崇高な精神と歴史を引き継ぐため、ここに平和の碑を建立する〉と書かれている。

英語の解説文には、「SexualSlavery」(性奴隷制)という言葉が見てとれた。「性奴隷」の象徴としてこの少女像が存在していることがしっかり記されていた。日本の公式見解とは明らかに異なるものであり、これらの説明には2つの点で「虚偽」があった。

まず、慰安婦は「性奴隷」ではない。あの貧困の時代に春を鬻ぐ商売についた女性たちだ。当時の朝鮮の新聞には〈慰安婦募集 月収三百圓以上勤務先 後方〇〇部隊慰安所 委細面談〉などという新聞広告が出ていたように、上等兵の給料およそ十圓の時代にその「30倍以上」の収入を保証されて集まった女性たちである。彼女たちの収入は、当時の軍司令官の給与をはるかに凌駕していた。

恵まれた収入面については、さまざまなエピソードがあるが、ここでは触れない。ともかく慰安所(「P屋」と呼ばれた)には、日本人女性が約4割、朝鮮人女性が約2割、残りは……という具合に、あくまで中心は日本の女性たちだった。ちなみに日本人女性で慰安婦として名乗り出たり、補償を求めた者は1人もいない。

もちろん喜んで慰安婦になった女性は少ないだろうと思う。貧困の中、さまざまな事情を抱えて、お金のために慰安婦の募集に応じざるを得なかったのだろう。私たち日本人は大いに彼女たち慰安婦の身の上に同情するし、その幸せ薄かった人生に思いを致し、実際に日本は代々の首相が謝罪し、財団もつくり、その気持ちを談話として伝えてきている。

朝日と韓国が虚偽の歴史を

しかし、朝日新聞や韓国は、これを日本軍や日本の官憲が無理やり「強制連行した女性たち」であるという“虚偽の歴史”を創り上げた。韓国は世界中に慰安婦像なるものを建て、性奴隷を弄んだ国民として日本人の名誉を汚し続けている。私たちは、この虚偽を認めるわけにはいかない。

まして「少女が性奴隷になった」などという、さらなる虚構を韓国が主張するなら、それはもう論外だ。そして、目の前の少女像は、その「虚偽」を世界中に流布させることを目的とするものである。日本人は少女像が虚偽の歴史を広めるものであることを知っており、少女像の存在は間違いなく「両国の分断」をより深くするものと言える。

しかし、韓国がどこまでもこの虚構にこだわるなら、もはや両国に「友好」などという概念など、未来永劫生まれるはずはない。

軍需工場などに勤労動員された「女子挺身隊」を慰安婦と混同した朝日新聞の大誤報から始まった虚構がここまで韓国の人々を誤らせたことに、私は両国の不幸を感じる。それと共に同じ日本のジャーナリズムの人間として朝日新聞のことを本当に腹立たしく、また悔しく思う。

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不快極まる作品群

私は、少女像の前に展示されていた作品にも首を傾げた。「時代の肖像―絶滅危惧種 idiot JAPONICA 円墳―」と題されたその作品はテントのようなかまくら形の外壁の天頂部に出征兵士に寄せ書きした日の丸を貼りつけ、まわりには憲法九条を守れという新聞記事や靖国神社参拝の批判記事、あるいは安倍政権非難の言葉などをベタベタと貼りつけ、底部には米国の星条旗を敷いた作品だった。

idiot とは「愚かな」という意味であり、JAPONICAは「日本趣味」とでも訳すべきなのか。いずれにしても「絶滅危惧種」 「円墳」という言葉からも、絶滅危惧種たる「愚かな」日本人、あるいは日本趣味の人々の「お墓」を表すものなのだろう。日の丸の寄せ書きを頂点に貼った上にこのタイトルなので、少なくとも戦死した先人たちへの侮蔑を含む作品のように私には感じられた。

どの作品も「反日」という統一テーマで括られた展示だった。会場の壁には「表現の不自由をめぐる年表」も掲げられていたが、「表現の不自由」といえば、チャタレー事件に始まり、四畳半襖の下張事件、日活ロマンポルノ事件をはじめ、ポルノやヘアをめぐって当局との激しい闘いの歴史が日本には存在する。

私は、これらが「なぜ無視されているのか」を考えた。つまり、展示はあくまで政治的な主張が目的なのであって、純粋な「表現の自由」をめぐる訴えなどは考慮にないのではないか、と感じたのである。

あいちトリエンナーレは、日本人の税金が10億円も投入され、公の施設で開かれる「公共のイベント」だ。そんな場所で、わざわざ他国が主張する「虚偽の歴史」のアピールをする意味は何だろうか。それを許す責任者、つまり大村秀章・愛知県知事は余程の「愚か者」か、あるいはその韓国の主張に確固として「同調する人物」のどちらかなのだろう。

私は、こんな人物が愛知県知事という重責を担っていることに疑問を持つ1人だが、首長を選ぶのは、その地域の人たちの役割なので、私などがとやかく言う話ではない。

私は、試しに韓国や中国へ行って同じことをやってみたらどうだろうか、と想像した。たとえば韓国人の税金が投入された芸術祭で、何代か前の大統領の肖像をバーナーで焼き、その燃えかすを思いっきり踏みつけてみる。そして、その大統領の顔を損壊し、剥落させた銅版画を展示してみる。韓国人はどんな反応を示すだろうか。

また中国へ行って、中国共産党の公金が支出された芸術祭で、同じように毛沢東の肖像をバーナーで燃やしてみる……。どんな事態になるかは容易に想像がつく。作者は、おそらく表現の自由というものは、決して「無制限」なものではなく、一定の「節度」と「常識」というものが必要であることに気づかされるのではないか。イスラム社会で仮にこれをやったら、おそらく命が断たれるだろう。逆に私は「日本はいかに幸せか」をこの展示で感じることができた。

しかし、日本人にとって国民統合の象徴である昭和天皇がここまで貶められるのはどうだろうかと思わざるを得ない。昭和天皇、そして昭和天皇のご家族にとどまらず、自分たち日本人そのものの「心」と「尊厳」が踏みにじられる思いがするのではないだろうか。つまり、これらは、間違いなく日本人全体への憎悪(ヘイト)を表現した作品なのである。

もし、これを「芸術だ」と言い張る人には、本物のアーティストたちが怒るのではないか、と私は思った。「あなたは芸術家ではない。偏った思想を持った、ただの政治活動家だよ」と。

それは昭和天皇を憎悪しない普通の観覧者にとっては、ただ「不快」というほかない作品群だった。少なくとも、多くの日本人の心を踏みにじるこんなものが「アート」であるはずはない。作者が日本人に対するヘイトをぶつけただけの展示物だと私には思えた

支離滅裂の大村知事

私が会場を去って間もなくの午後5時。同センターで緊急記者会見した大村秀章・愛知県知事は、

「テロや脅迫ともとれる抗議があり、安全な運営が危ぶまれる状況だ」

と語り、突如、展示中止を発表した。芸術祭事務局に「美術館にガソリン携行缶を持って行く」との脅迫のファックスがあり、安全が保てないことを理由に「中止を決めた」という。開幕からわずか3日。信じがたい展開だった。

それは「あってはならないこと」である。「表現の自由」を標榜して展示をおこなっているなら、どんなことがあっても脅迫や暴力に「負けてはならない」からだ。まして大村氏は愛知県知事だ。愛知県警を大動員してでも、「暴力には決して屈しない」姿勢を毅然と示さなければならない立場である。

一方で私には「ああ、逃げたな」という思いがこみ上げた。あの展示物を見れば、常識のある大人ならこれに税金を投じることの理不尽さを感じ、非難がますます大きくなることはわかる。それを察知した大村知事は、テロの危険性をことさら強調し、自分たちを「被害者の立場」に置いた上で“遁走”したのだろう。

その証拠に4日後、実際にファックスを送った当の脅迫犯が逮捕されても大村知事は展示再開を拒否した。

芸術祭の実行委員長代理である名古屋市の河村たかし市長はこの展示を知らず、慌てて観覧した後、

「少女像の設置は韓国側の主張を認めたことを意味する。日本の主張とは明らかに違う。やめればすむという問題ではない」

と大村知事と激しく対立した。これに対して大村知事は、

「(河村氏の)発言は憲法違反の疑いが極めて濃厚。憲法21条には、“集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。検閲は、これをしてはならない”と書いてある。公権力を持っているからこそ、表現の自由は保障しなければならない。公権力を行使される方が、この内容はいい、悪いと言うのは、憲法21条のいう検閲と取られても仕方がない。そのことは自覚されたほうがいい」

と反撃。だが、憲法12条には、「表現の自由」などの憲法上の権利は濫用されてはならないとして、〈常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ〉と記されている。表現の自由をあたかも「無制限」であるかのように思い込んでいる大村知事の認識の甘さは明白だった。

真実を報じないマスコミ

もうひとつの問題点は、報道のあり方だ。産経新聞やフジテレビを除くマスコミは、少女像のことばかりを報道し、昭和天皇の肖像焼却や顔の損壊などのヘイト作品について一切、触れなかった。ただ「表現の自由が圧殺される日本」という報道に終始したのである。

もし、展示中止が妥当なほど作品がひどいものだったら、そもそも自分たちの論理は成り立たなくなる。そのため少女像だけの問題に矮小化し、いかに日本では「表現の自由」が風前の灯であるかという報じ方に徹したのだ。

真実を報じず、自分の論理展開に都合のいいものだけを取り上げるのは、日本のマスコミの特徴だ。

8月4日の朝日新聞の天声人語では、〈75日間公開されるはずだったのに、わずか3日で閉じられたのは残念でならない▼ある時は官憲による検閲や批判、ある時は抗議や脅し。表現の自由はあっけなく後退してしまう。価値観の違いを実感させ、議論を生みだす芸術作品は、私たちがいま何より大切にすべきものではないか〉と主張し、8月6日付の記事では、〈表現の不自由展 政治家中止要請 憲法21条違反か 応酬〉〈永田町からも危惧する声「政府万歳しか出せなくなる」〉と、展示物の詳細は伝えないまま大村知事を全面支援した。

だが、ネットではいち早く作品群の詳細が伝えられ、芸術監督を務めた津田大介氏と企画アドバイザーの東浩紀氏が昭和天皇の肖像を焼却する作品が展示されることを笑いながら話す動画など、さまざまな情報が炙り出されていった。

今回も新聞とテレビだけを観る層とネットを観る層との著しい情報量の乖離が明らかになった。いま日本は情報面において完全に「二分」されている。

ネットを駆使する人たちはマスコミが隠す情報さえ容易に手に入れることができ、一方では、偏った主義主張を持つメディアにいいように誘導される人たちがいる。そこには、大きな、そして根本的なギャップが存在しているのである。

今回の出来事は、「芸術である」と主張さえすれば何でも通ってしまうのか、極めて偏った政治主張によるヘイト行為もすべて認められるものなのか、という実にシンプルな問題と言える。同時に、韓国への批判は「ヘイト」、日本を貶めるものは「表現の自由」という倒錯したマスコミの論理に国民が「ノー」を突きつけたものでもあった。

一部の反日、反皇室、親韓勢力による公的芸術祭の乗っ取りとも言える行為は、こうして途中で頓挫した。そして、日本のマスコミの「あり得ない姿」も露わになった。

今回の出来事を通じて、私たち日本人は日本の“内なる敵”マスコミと、特異な主張を展開する一部政治勢力への「警戒」と「監視」を疎かにしてはならないことを改めて学ばせてもらったのである。

門田隆将

https://hanada-plus.jp/articles/187

作家、ジャーナリスト。1958年、高知県生まれ。中央大学法学部卒業後、新潮社に入社。週刊新潮編集部に配属され、記者、デスク、次長、副部長を経て、2008年4月に独立。『この命、義に捧ぐ―台湾を救った陸軍中将根本博の奇跡』(集英社、のちに角川文庫)で第19回山本七平賞受賞。近著に『オウム死刑囚 魂の遍歴―井上嘉浩 すべての罪はわが身にあり』(PHP研究所)、『新聞という病』(産経新聞出版)がある。

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