膳場貴子氏:1950年には、「戦争を目的とする科学の研究には絶対従わない」とする声明を発表。さらにベトナム戦争が泥沼化し、東西冷戦が激しさを増す1967年にも同様の声明を発表します。しかし、こうした戦争とは距離を置く姿勢に、安倍政権下で変化が訪れます。2015年、防衛装備庁による、軍事技術に応用可能な研究を助成する制度がスタート。これに科学者らから反発の声が出ました。
名古屋大学・池内了名誉教授(2017年):各大学、研究機関に応募しないよう求める。(軍事研究に)大量の資金が大学や研究機関に流れ込んできたときに、はたして研究の自由や大学の自治が担保されるのでしょうか。
膳場貴子氏:学術会議は2017年、声明で「政府による研究への介入が著しく問題が多い」などと懸念を表明します。
人権蹂躙の覇権国家が科学技術を無制限に軍事利用する現実社会において、民意を反映しない私人が軍事研究を制限することは、学問の自由の侵害であるばかりか、国民の生存権の侵害にあたります。日本国憲法の下、日本における軍事研究は平和主義と一体化した専守防衛に必要不可欠なツールであるからです。
そもそも、科学者は、【論理 logic】を基に「である」「でない」という真偽を導く専門家であり、【倫理 ethics】を基に「すべきである」「すべきでない」という善悪を導く専門家ではありません。そればかりか多くは倫理の素人です。
つまり、日本学術会議のような科学者の団体に政府の倫理を評価させることは論理的ではないのです。
勘違いエリートに権限を与える余地をなくす
東京大学・大西隆名誉教授(VTR):法律の中身は、その独立性が非常に危うくなるとか、先進国のアカデミーとしてはあまりふさわしくない形態にしようとしている。
膳場貴子氏:独立性を巡って、注目が集まる日本学術会議。その有り様は今後、変わっていくのでしょうか。
自らを全知全能の無謬の存在と勘違いして【権威論証 appeal to authority】で政治的影響力を発揮しようとする日本学術会議こそむしろ国民にとって危険な存在であり、不要な存在です。彼らは学術界の科学者が支持する民主的な代表ですらありません。
いずれにしても、今回の法改正で、日本学術会議は、国家財政支出による安定的な財政基盤、活動面での政治からの独立、会員選考における自主性・独立性を確保しました。
もし、彼らが地位と権限を持ちたいのであれば、その実力を国民に示すことです。コロナというパンデミックにおいてまったく役に立たなかった日本学術会議に血税を注ぎ込むのは合理的ではありません。