これらのうち①②④は、政府がエリート集団である日本学術会議という私人の集団に地位と特権を与える【専制 autocracy】的な要求であり、日本のような【民主主義 democracy】の社会からすればむしろ脅威です。
法的な存在である政府を超えて、国民の意向とは無関係な私人が善悪を判断する権限をもつことは民主主義の破壊です。
膳場貴子氏:今回の法案では、学術会議を現行の「国の特別機関」から「特殊法人」に移行。総理が任命する「監事」や「評価委員」が置かれることから、政府による管理が強まるのでは、という懸念の声が上がったのです。
全労連・秋山正臣議長(VTR):結局、国の言うがままに動かざるを得ない。
国民の血税で運営する特殊法人である以上、日本学術会議に監事と外部評価委員が置かれるのは当然です。また、国を通して国民が日本学術会議を監視することは通常の民主主義です。
膳場貴子氏:組織の改変に向けた議論が続く学術会議。一方で戦後80年、学術会議の歴史は“反戦”とともにありました。1920年、日本学術会議の前身である「学術研究会議」が設置されます。やがて戦争が激しさを増す中、学術研究会議は変容を迫られます。
東京大学大学院・隠岐さや香教授(VTR):戦時中の1943年頃に、会員任命が政府の直接の任命になると、完全に人事権が奪われる。そして、軍事研究のコーディネートをするような機関になりました。
膳場貴子氏:結果として、戦争に奉仕する形となった反省から、戦後の1948年、学術研究会議は廃止。新たに1949年、日本学術会議が設立されました。
もし、学術団体が戦争に奉仕する団体に変容する可能性を問題視するのであれば、むしろ学術会議は即刻解散するのが望ましいといえます。